| ■イソザキ時計宝石店■ |
| 時計の小話 |
第86話(時計技術通信講座の受講生の方について) 3月21日に東京のSさん、4月18日に浜松市のMさん、千葉県市川市のIさん、大阪のYさんが、第1回時計技術通信講座を受けるために遠路はるばる石川県の当店にご来店下さいました。最初に19セイコー懐中時計Cal、9119A 15石(国鉄昭和40年代の車掌区・機関区・保線区の標準時計)の分解・天真入れ替え・洗浄・組立・注油をそれぞれしていただきました。脱進機・調速機の調整は難しいので、今回は見送りました(話が変わりますが私の兄はとても器用な人だったため、大学時代19セイコーの分解掃除を父に教わり、修理のアルバイトをしておりました。滋賀県・長浜のイソザキ時計店は、当時国鉄の指定店だったので、東海道本線北陸本線分岐点の米原駅の国鉄職員さんが持っておられた19セイコーの修理が、毎月何十個と一杯きておりました。7石のタイプで、ほとんどが天真入れ替え・ゼンマイ切れ・ホゾかしめの修理)。4人の方とも無事にテンプ・ガンギ・アンクル等の心棒を折ることなく作業をこなされました。市川のIさんはそれから手巻き腕時計ノンCal 17石の分解・洗浄・組立・注油をされ、浜松のMさん大阪のYさんがセイコー自動巻腕時計Cal、6106C 25石の分解・洗浄・組立・注油をされました。4人の方とも無事作業を終え、ムーブは後日見てもしっかり動いておりました。初めて懐中・腕時計の機械をいじられたにもかかわらず、難なく作業が進んで行ったので、私は 4人の手先の器用さに吃驚いたしました。1日中作業をして、ピンセットで細かい部品を飛ばされた方が一人もいないことにただただ驚愕しました。余程、小さいときから時計が好きで、細かいプラモデル・トランジスタラジオ・置き時計の組立等をしてこられたものと推察いたしました。そうでなければあんなにうまくいくはずがありませんもの。僅か1日でここまで進むとは想像だにしませんでした。あと3回の時計技術講座でどこまで腕を上げられるかとても楽しみです。次回からは肝心要のヒゲゼンマイ調整・アンクル爪の注油等の作業に進めたいと思っておりますが、果たしてこれまでのように順調に運ぶかどうか期待と不安が交錯いたします。昔から好きこそ物の上手なれと言いますが、それを地で行くような4人の方でした。時計に対して並々ならぬ情熱と熱意が感じ取られました。時計技術通信講座を受けられた動機をお聞きすると、自分の持っている腕時計を自分の手で直してみたいと言うことでした。 余談 19セイコー懐中時計ファンの方でアンティーク・ショップで買われる予定の人は、S40年代製造の15石のCal9119Aのムーブが入った時計を 買われるとイイでしょう。7石の19セイコーは、2〜3番車のホゾ穴がへっているのが多く見られますので避けた方が賢明です。できたら7石のタイプは買わない方がイイでしょう。 第87話(滋賀県の近江時計眼鏡宝飾専門学校について) 私が20代初頭の若かった頃、2級時計修理技能士試験を受験し、2位で合格し協会長賞を受けましたが、その時に大変お世話になった先生が近江時計学校におられました。その先生は行方二郎(勿論CMW)というお名前で、滋賀県の大津市でタマヤ時計店という屋号の店を経営されておられました(店にもお弟子さんが常時3〜4人ぐらいおられました)。常勤講師で店の経営の傍ら、近江時計学校の生徒さんに時計技術を熱心に教えておられました。2級受験のために3〜4回学校にて講義を受けましたが、厳格な反面、大変情熱のある先生で生徒さんにもとても人気のあるお方でした。威風堂々とした体躯の持ち主で、行方先生の前に立つと誰もが萎縮してしまうような圧倒さを受けました。授業内容も手抜きのない一生懸命な教え方で、いつも感銘を受けて帰路したものでした。先生の教え方が上手な為に、生徒さんも僅かな期間にグングン能力を伸ばし、2年の在籍で2級時計修理技能士試験を合格した生徒さんが毎年、半数近くにのぼりました。その中で成績優秀な生徒さんが技能オリンピック予選に出て、セイコー舎の優秀な若手技術者と対等に争いました。毎年2〜3名のトップクラスの生徒さんが行方先生の推薦を受け、CMW試験を受けられるほどまで成長されたのも、行方先生の手腕のお陰といわざるを得ません(残念ながらほとんどの生徒さんは不合格でしたが、その後何回も挑戦し見事CMWを獲得された卒業者の方は何人かはおられました)。東京にもヒコみずの時計学校がありますが、私見ですが過去の実績・歴史等を比較すれば、近江時計学校の方が充実しているのではないでしょうか。 これから時計技術を専門に学びたい方は、近江時計学校のことを頭の中に入れておく必要があると思います。今年3月中旬に近江時計学校のI氏から電話があり、1週間に2回の非常勤講師として学校で生徒さんに時計技術を教えていただけないかという有り難い招聘のお話がありました。しかし、店の経営・外商・修理といろいろあり時間の余裕もないために、鄭重にお断りいたしました。もう少し年を取り器も大きくなり、人間的にも丸みが出てきましたらお受けしたいと思っております。 僭越ながら、私も将来的には直属の愛弟子を2〜3人持ちたいと熱望しております。私の恩師、K先生も4人のCMW技師を育てられました。K先生も行方二郎先生も私にとっては大恩人ですが、お二人の先生はとてもよく似ておられます。 仕事に対してはとても厳しい姿勢ですが、眼の奥には温かい愛情が溢れているのです。人間的にも大変尊敬でき、このような人に邂逅できたできた自分の運の強さに感謝したいと つくづく思います。人生にとって大変重要なことの一つに、師と呼べる人に巡り会えるかどうかがあると思います。私の人生の中で、お二人に出会えたことを一生の宝として大切に胸にしまっておこうと思っております。 第88話(2001年バーゼル・フェアについて) 今年3月末にあった、恒例のバーゼル・フェアの情報を集めてみますと、スイスの一部の有名時計メーカーは、トゥールビヨン・永久カレンダー・ミニッツリピーター等の複雑時計を競って開発し、いろんな意味で話題を独占的に集めました。あたかもコンプリケーションでなければ時計として魅力が全くないような雰囲気だったそうです。リズム時計のS氏のお話によると、セイコー・シチズンのブースは目立たない隅の方に追いやられて寂しかったそうです。確かにトゥールビヨンの天府の動きは面白くて魅了されますが、はたしてどれくらいの人が購入出来るのでしょうか。云百万円から数千万円もする腕時計を、気に入ったからといってポンと衝動買い出来る人が日本中でイヤ世界中でどれほどおられるでしょうか。その点ROLEX社の新製品は、日本人でもちょっと無理すれば買える品揃えがしてあった そうです(ま、それでも高額ですが)。ROLEX社が大変な世界トップクラスの技術力がありながら、今まで複雑時計を敢えて作って売り出さないのは、あくまでも実用本位のものに技術資源力を集中したいが為かもしれません。一部の裕福なマニアだけを対象とした時計は作らないという企業姿勢に、一般庶民の私は共鳴を覚えます(はっきり言って新品で25万円前後で買えるエアー・キングのメカ・ムーブメントは、この価格帯のスイス時計の中では群を抜いて素晴らしく良く、他に大きく差を付けていると思います)。セイコー舎は、数年前トゥールビヨンの試作品を完成させましたが、結局発売に至らなかったのは何故なのでしょうか(その替わりにメカ式のフライトマスター・クロノグラフ 35万円を開発し、発売に漕ぎ着けましたが)。 市場調査の結果、かんばしくないデーターが出たのでしょうか(日本のユーザーの人々にトゥールビヨンに対して強い関心が存在しなかったのでしょうか? それとも余り知られていないからなのでしょうか)。私は是非とも価格が50万円を切るトゥールビヨン腕時計をセイコー舎に作ってもらいたいのです。あの機構は確かに複雑ですが、セイコー舎にとって手に負えないモノではないはずです。セイコー舎の蓄積された技術力・生産力からして不可能ではないはずなのです。50万円を切るトゥールビヨン・セイコー腕時計が世に出てきたら、それこそ世界中の時計ファンのセンセーションを巻き起こすに違い有りません。未曾有の不景気の日本の時計業界にとって、効果抜群のカンフル剤になるのに違いないのです。日産が12年前、高級自動車シーマを新発売したときのシーマ現象のようになるような気が します(一方、スイス時計業界は絶好調です。30年間で日本とスイスでは全く立場が逆転してしまいました。もう完全にメカ式腕時計が復権したと断言してもイイと思います。クォーツは数では圧倒的に多いですが、金額ペースでは追い抜かれているのではないで しょうか)。私もトゥールビヨン・セイコー腕時計が出てきたら、飛びついて1個買うに相違ありません。 頑張って下さいセイコー技術陣の皆さん。30年前の天文台コンクールでスイス時計に圧勝したときのように、進取の精神を取り戻して欲しいと思います。今年のバーゼル・フェアで私にとって大きく関心があったのは下記の時計です。・バセロン・コンスタンチン マルタグラン・クラシック 110万円(手巻き・自社ムーブ・K18ケース)・ロンジンの薄型自動巻ムーブを搭載した品番990 65万円(1977年以来の復活・高精度の出る高振動ムーブのリバイバル)・タグ・ホイヤーモンツァ(ゼニスのエルプリメロ搭載) 価格未定(おそらく予想ですが25〜30万円位でしょうか)・グランドセイコー(セイコー舎創業120周年記念限定モデル・K18側 手巻き) 88万円・シチズン カンパノラ コスモサイン(452個の恒星、119個の星雲を文字板に表示・夢があるクォーツです)18万円・シチズン カンパノラ パーペチュアル カレンダー(過去未来100年間のカレンダー表示機構搭載、メカ式にしたら云千万円するでしょう) 20万円以上です(上記の品はまだ市販されていません。発売時期は今秋でしょうか)。 余りにも高額な手の届かない時計には関心は沸きませんでした(だって、欲しいと思ったところで所詮、無駄な足掻きになるのですから)。 第89話(時計オークションについて) 先月、関西の一流会社のビジネスマンから、オークションで購入した無名のトゥールビヨン腕時計(SS側)の修理依頼を受けました。40万円というトゥールビヨン腕時計ではかなり安い品なので飛びついて買ってしまったが、1ヶ月で止まってしまったと言うことでした。SS側のトゥールビヨン腕時計ということで少し懸念がありましたが好奇心もあり、一度送ってもらいました(トゥールビヨンの修理の機会はそうあるものでもないので、贋作品でも直る物なら直してみようと思いました)。お預かりして中を見てみましたが、一応トゥールビヨン機構にはなっていましたが、機械自体はひどいモノでした。安価なムーブを改造した海賊版で、ガンギ・アンクル等がひどく錆びており、ヒゲゼンマイも何らの調整もしてありませんでした。テンプの重力誤差の補正、以前の問題でヒゲ棒アガキもテンプの振り角によって異なり、滅茶苦茶でした。文字板もネジ止めではなく背着剤で止めてあり、地板もカシメて分解できないようになっていました。デザインはブレゲ・トゥールビヨンに似ていました(海賊版とは言え40万円とは大金ですね。ムーブを見ないで大金を出すのはやっぱり危険です)。おそらく香港か東南アジアの手先の器用な悪意な時計職人が、善良な市民を騙すために作ったものと想像しております。今では香港製の本当に精巧な偽物が沢山出回っており、注意が必要です。時計の小話で何回となく書いてきましたが、高額なアンティーク腕時計やオークションで高額品を競りおとす場合は、目利きのできる人に中の機械を見てもらい、納得してから購入されることをお薦めします(あとあと後悔しないためにも)。世の中は善良な人々が大多数ですが、中には詐欺師ペテン師がいっぱい落とし穴を作って待ちかまえていることを肝に銘ずべきかと思いました。 第90話(鉄道腕時計について) 国鉄時計と言えば19セイコー懐中時計が思い浮かべるほど有名ですが、広島市の読者の方から30年前の国鉄職員専用の腕時計 (シチズン・ホーマー21石セコンドセッティング機能付き)の修理依頼が舞い込みました。今ではすっかり忘れておりましたが、シチズン・ホーマーも国鉄に採用されておりました。このムーブは安価の割にはとても精度が出る機械で、1級時計技能士試験の教材にもなった時計でした。前回の修理の時に裏蓋パッキングが入っていなかったためにかなり錆びておりましたが、OH・及び調整でかなりの精度が復活しました。国鉄に正式採用されたほどのことはあると今更ながら感心いたしました。機械時計は持っている人の愛情一つでいくらでも寿命が延びる物であると思います (水・衝撃・磁気に注意すれば)。定期的に3〜4年に一度、しっかりした技術者に分解掃除をしていたら、60年間は完璧に正常に動くものと思います。シチズンも素晴らしいメカ式腕時計を製造できる技術を持ち合わせていたのですから、セイコーのメカ式GSのようにグロリアス・シチズンの復活を渇望します。やっぱり本当の時計の味・良さを解る人は、メカ式の腕時計を買われるのではないでしょうか。若者を中心にあれほど騒がれたカシオGショックも、今では陰りを見せ時計部門売上高も16%減になったということらしいです。デジタルはいろんな面白い機能が付いて楽しいですが、私はいまだかって1個も所有したことが ありません(逆に言えば年食って頭がついていかないのかもしれませんが)。この時計はHPに載せてありますので関心のある方は一度見て下さい。 |
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