■イソザキ時計宝石店■
時計の小話



第96話(目覚まし機能付きセイコー・ベルマチックについて)

兵庫県小野市の読者の方より、1968年製のセイコー・ベルマチック27石 Cal、4005Aの修理依頼を受けました(アラームベルが機械仕掛けで15秒間鳴り続けます)。非常に長い間、止まっていて使っていない代物で、整理箱にしまっていたのを取り出して送られてきました。この時計は国産では初めて、諏訪精工舎が1967年売り出したセイコービジネスベル(5振動、精度等級C 日差−15秒〜+25秒)の姉妹品です。もう25年以上見ていない時計で懐かしさを覚えました。行方のしれなかった友人に偶然に街角で会ったような喜びに似たものを感じました。分解してみましたが、二十数年間動かしていないだけあって、全体にかなりの錆が廻っておりました。文字板止め足も片方が折れておりました。錆びた部品をキレイに落とし、ハケ下洗い・超音波洗浄・注油・組立・調整後、見事に蘇りました(錆びておりますと作業時間は倍以上かかり手間も大変です)。緩急針調整で、日差プラス15秒前後にまで精度が蘇りました。ムーブはとても堅牢に作られてあり、定期的にOHすればまだまだ数十年使える時計です。セイコーの時計を修理するたびにいつも感心するのは、設計度の高さです。最近のスイス高級時計・I社のよく故障した腕時計の修理が沢山舞い込みますが、I社のものと比較してセイコーのムーブの方がかなり安いにもかかわらず、精密でありながら堅牢性が高く、壊れにくい設計がなされております。30〜40年ほど前のセイコーの技術力は大したものであったとつくづく痛感し、日本人として誇りに感じます。マスプロ・マスセルのために非常に良い機械であったにもかかわらず、セイコー腕時計の価格は良心的であったのでしょう(この時計はHPに載せてありますので関心のある方は見て下さい)。時を前後して、奈良県の読者の方よりジャーガー・ルクルトのアラーム付きの腕時計(Cal,No735417−601)の修理依頼が舞い込みました。今から4〜50年ほど前の時計で中の機械を見てみましたがかなりくたびれており、骨董品の部類にはいる物ですが、ご期待に添えるか解りませんが修理のチャレンジをする予定です。機械時計は愛情を持ってご使用になられると、その所有者の一生涯の腕の伴侶になるもので、大切に使用したいものと思います※スイス高級時計の操作上の注意事項※R社・I社・Z社等の瞬間早送り機構が付いたカレンダー腕時計の操作上の注意として、時計が8時〜4時を差しているときはカレンダー早送りは絶対しないで下さい。時計の針の時刻が昼の間はかまわないのですが、うっかりして間違えますので8時〜4時を差しているときはリューズをいじらないと決めた方がイイでしょう(故障の原因として1番多いのが誤操作です)。原則として分針の逆回しはしない方が賢明です。5分から10分位ならかまいませんが。クロノグラフをお持ちの方はよくよく使用書を読む習慣を身につけましょう。

第97話(第3回時計通信講座のついて)

6月20日に第3回時計通信講座の受講のために、千葉県のIさん、東京のSさん、静岡県のMさんの3人がご来店されました(大阪のYさんは都合により欠席でした)。MさんにはセイコーロードマッチクCal、5606A 25石 (セイコーの中で1番好きなムーブメントです。部品数が極めて少ないにもかかわらず、デイデイト自動巻です。故障しにくく簡潔で高精度がいとも簡単に出る素晴らしいメカです)を、IさんとSさんにはセイコーマチックCal、6218C35石のOHを1日かかりでやってもらいました。今回は前回よりも難しかった作業が多い為か、テンプの受け石・穴石の注油の時に、受け石を ピンセットで掴むのを失敗し、飛ばして紛失したり、ダイヤショックテンションバネを飛ばしたりでいろいろと作業がはかどらず大変でしたが、帰る頃までには何とか3人さんとも完成させられました(翌日みてもしっかり動いておりました)。ハイスピードで教えているのに、一生懸命ついてこられる受講生の皆さんの態度に、時計技術を身に付けたいという熱意がヒシヒシと感じられました。次回は調速機のヒゲゼンマイの調整を教えようと思いますが、山場ですので受講生の方は大変な事になると思ったりしております。ヒコ・ミズノ時計学校の中退者・卒業者の方からよくメールが届きますが、ある程度の基礎が解れば自己研鑽以外に腕をあげる方法はありません。焦らず・挫けず・一歩一歩確実にテクニックを上げていって欲しいものです。

第2回問題集

時計の小話通算97話を読んでいただければヒントがあります。
第1問 ロレックス旧デイトナにはゼニス・エルプリメロの機械がそっくりそのまま入っていた(正誤)
第2問 新品の超音波時計洗浄機は現在20万円以内で購入できる(正誤)
第3問 世界のセイコーに大きく育て上げた服部正次氏は4代目の社長だった(正誤)
第4問 ゼニスはこの度スウォッチグループに参入した(正誤)
第5問 日本ではクロノメーターを検査する公式機関は現在のところ存在しない(正誤)
第6問 天真のホゾの太さは髪の毛よりもほとんどが太い(正誤)
第7問 スイス時計の中で多くのクロノメーターを生産してきたのはオメガ・ロレックスである(正誤)
第8問 ゼニス・エルプリメロは28800振動のハイビートである(正誤)
第9問 腕時計の電池にはデジタル用とアナログ用がある(正誤)
第10問 ジャガー・ルクルトは他社にムーブを供給している最高の時計メーカーの一つである(正誤)
第11問 スイスの宝飾腕時計には必ずホールマークが入っている(正誤)
第12問 ブランパンはクォーツ腕時計も多く作っている(正誤)
第13問 オーディマ・ピゲは1775年創業である(正誤)
第14問 人間の心臓部分はアンクルである(正誤)
第15問 CMWの恩人、山口隆二先生は京都大学の先生だった(正誤)
第16問 ロレックス社の製造する時計の中にはETA社の機械が入っている時計がある(正誤)
第17問 キングセイコーの中で最高のCalは45系である(正誤)
第18問 ETA社のムーブを採用している有名時計メーカーの中にIWC・ナルダン・ ホイヤーが含まれる(正誤)
第19問 ブライトリングのクロノグラフはカム式である(正誤)
第20問 近江時計学校の卒業者の中にCMW取得者がいる(正誤)
第21問 婦人用のグランドセイコーは第二精工舎が作った(正誤)
第22問 ピアジェは1774年創業である(正誤)
第23問 ロレックスの自動巻は28800振動が多い(正誤)
第24問 セイコーのロードマッチクのムーブは私は一番好きである(正誤)
第25問 ETA社はマニュファクチュールである(正誤)
以上の25問ですが易しいものもあれば、少し専門的な難しいものもあったかと 思います。前回よりもかなり易しくしました。

第2回問題集25問 解答

第1問 (誤)
第2問 (誤)
第3問 (誤)
第4問 (誤)
第5問 (正)
第6問 (誤)
第7問 (正)
第8問 (誤)
第9問 (正)
第10問 (正)
第11問 (正)
第12問 (誤)
第13問 (誤)
第14問 (誤)
第15問 (誤)
第16問 (正)
第17問 (正)
第18問 (正)
第19問 (正)
第20問 (正)
第21問 (正)
第22問 (誤)
第23問 (正)
第24問 (正)
第25問 (誤)

第98話(新参入の時計愛好家)

先月、当店の表看板を見てぶらりとご来店いただいた地元松任市のNさんは、私と意気投合し、時計談義を2時間あまりしていて、他店でオメガ・スピードマスターを買う予定をやめて当店で買っていただきました。それ以来頻繁に当店にご来店されるようになりました。時計の小話も全てバックナンバーで読まれ、ますます時計の奥深い魅力にはまってしまったと、嬉しい反面、嘆いて?もおられました。そうこうしていると、数日過ぎたある日、値札の付いたシチズンの40年ほど前のスーパージェット自動巻腕時計や、シチズンの同じく40年ほど前の新品の手巻きの時計を持ってこられて、この時計は良い時計ですかと訊ねられました。良い時計ならある人から買うと言うのです。値札の付いた新古品とは、もういまではとても珍しい時計ですよと言うと、その時計を買ってしまったと言う連絡がありました。後日また来られ、アンティークのロンジン・ウルトラクロン(30年ほど前の10振動の高精度機械 ロンジンの名機 OHのため修理預かり中)や、角形のロンジン・アドミラルを持ってこられました。どこで次から次と入手されるのですかと問うと、友人が何十万円も持って日本中のさびれた田舎の時計店巡りをしているとのこと。めぼしい時計があると現金を見せて値を叩いて、まとめて何十本と買ってくるらしいのです。趣味で始めたものが今では本業になり、あっちこっちの日本の時計店漁りをしていると いうのです。聞けば面白い旅から旅への骨董探しの仕事があるものですね(情報の疎い地方の跡取りのいない時計屋の親爺さんは、古いメカ時計が今では高値で取り引きされているのを知らないで安く手放してしまうのですね)。しばらくするとまた来られ、30年ほど前の値札の付いた新品のキング・セイコーバナック(定価札38000円)を2本持ってこられました。52系のクロノメーターに準ずる素晴らしいムーブなので、無理を言って1個自分用に分けて貰いました。新品のエドックスのデイデイトの自動巻腕時計も安かったのでこのNさんから買いました (二人はおかしな関係ですよね)。世の中、探せば楽しくて面白い仕事があるものですね。真贋を見極める目、時計の機械の状態がどんなところか解れば、Nさんの友人のように、けっこう小遣い稼ぎになるものなのでしょう。ふうてんの寅さんのように、小遣いを稼ぎながら気ままに日本中をあっちこっち旅しながら人生をおくれたら、どんなに楽しいでしょうか。いろんなしがらみやストレスの中で生きなければならない現在の人間には、Nさんの友人の生き方に羨ましくもあり、男のロマンを感じます。

第99話(ジャガールクルト・メモボックスについて)

奈良の読者のU氏から、先月ジャガールクルト・メモボックス(アラーム機能付き)の修理依頼が舞い込みました。生前の父親が大切に愛用していたという思い出の腕時計で、ネット上で知り合った人の紹介で当店に送られてきました。受け取ったときは、もうまさしく骨董品の部類で、ケース及び裏蓋の咬みあい部分が錆びて朽ちており、ケースが閉まらない状態で直らないのではないかと思いましたが、悪戦苦闘の上、やっと修理完了しました。分解掃除、天真ホゾ矯正(テンプに耐震装置がない旧タイプ、ホゾが折れたり曲がったりする)、ゼンマイ調整等を修理しましたが、平姿勢では動くのに、実測のために腕につけると数時間で止まるという難物でした。原因は、テンプ受けのアガキが若干少ないために抵抗が大きく、0,03mmの厚さのナイロンを噛ませることにより、アガキ調節して直しました (現行のロレックスにはテンプアガキ調節する機構が付いております。さすがですね)。こういう名作品を蘇らせる事は、時計職人として最高の充実感を味わえると共に、職人冥利に尽きる仕事なのです(万が一直らない時はどっと疲れが出るのですが、直ってやれやれです)。この時計は1956年、世界有数のマニュファクチュールのジャガールクルトが、世界で初めてアラーム付きの腕時計を他社に先駆けて生産した由緒ある時計です。50年近く過ぎた今でも改良を重ねながら生産続行している、人気のあるシリーズです。現行品ではSS側で50万円、18金側で105万円の2機種のみ生産されております。 現行品のムーブメントは進化しながらも、ほとんど50年前の物と基本的には一緒なのです(ビックリされたでしょうか?)。 他に、アラーム機能が付いたマスター・レヴェイユ(SSが60万円、K18側が132万円)も2機種売り出しております。45年も前に、こんな高価でスイス時計の名機を買い求めておられたU氏のお父様とはどのような方だったのでしょうか?多分とてもお忙しい方で、時間にとても几帳面で厳格な方であっただろうと想像します。 アラーム音(油蝉が鳴く音に似ています)は25秒間鳴り、リンが裏蓋に付いているので、ハンマーの叩く振動でも、決められた時間がハッキリ解ります。セイコーベルマチックはリンがミニッツリピーターのように棒リン状になっているために、音もやや静かで振動は少ないです。どちらが良いかは好みの別れるところです。あまりにも珍しいのでHPに載せてあります。本当は直に皆さんに見て欲しい時計なのですがそれもできませんね。ご来店いただいた一部の方にはお見せして感動しておられました。

第100話(ジャガールクルトについて その2)

読者の方からもっとJ・L(ジャガールクルト)のことを知りたいというメールが届きましたので、更に述べてみます。日本では圧倒的にROLEXが人気がありますが、時計技術者としてロレックスと比較しても何ら遜色のない、まさしくそれ以上の素晴らしい機械をたゆまず作ってきたスイス時計メーカーにジャガールクルト社があります。ジャガールクルト社は世界最高水準の時計技術を200年近くずーと有した並ぶもののいない時計会社の一つです。ROLEX・JL・AP・PP等の時計の修理をするときは、職人としてもう最高のルンルン気分なのです。日本でもっともっと沢山売れて欲しいと真から願う腕時計です(人気ばっかり先行して実力が伴わないスイス時計メーカーが沢山ありますが)。1833年創業以来、取得した特許の総数は数百にものぼります。1890年には何と125種類におよぶムーブメントを製造し、他社の高級時計メーカーにムーブを供給してまいりました。著名な宝飾高級時計メーカーもJ・Lから機械を買って時計を作っていたのです。過言すれば、J・Lが無かったら、ある有名なスイス時計会社も存在しなかったのでは ないでしょうかと言っても過言ではありません。1903年には、厚さ1,38mmの世界No1の極薄のポケットウォッチを作り、この記録は100年過ぎた今でも未だに破られていません。 開発に至難を極める超薄型時計に社運をかけてきたJ・L社は、2,8mmの厚さのクロノグラフ、2,70mmのミニッツリピーターのムーブを開発製造しております。 1953年には世界初のリューズ無しの自動巻時計フューチャーマチックを作り、1982年には世界最小のムーブメント(9,7×11,7mm厚さ1,8mm)を開発しました(どれほど小さいか皆さん想像をしてみて下さい)。その他にも枚挙に暇がないほど、革新的な時計ムーブを長年に渡り次から次へと製造しております。私見ですが、その点ではハッキリ言ってROLEX・IWC・GPよりも数段上の時計メーカーと言えるかもしれません。最近、読者の方から買って間もないI社の修理依頼がよく舞い込みますが、30年前のI社の時計には想像も出来なかった現象です。その点、ROLEX・JL社は何十年と変わることなく良心的で、その時その時の最高の機械を作り続けてきた希有な時計メーカーです。J・Lには特筆すべき点に、独自のマスター・コントロール1000時間という、出荷する前に行う腕時計のテストがあります。マイスター・ウォッチメーカー技師が、6週間(1000時間)に渡り過酷な検査を全てにし続けるのです。これは公認クロノメーターなどと比較が出来ないほど、厳しい1000時間に渡る精度・耐久試験です。これに合格したJ・L腕時計には、ケースバックにシリアルNo入りのゴールド・シールが付けられます。この時計こそ世界の頂点を極める腕時計であると言って過言はないでしょう。時計ファンとして1個は必ず所有したい腕時計です。


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