| ■イソザキ時計宝石店■ |
| 時計の小話 |
第141話(機械式時計の精度) ROLEX等のスイス高級時計の振動数は1時間28,800振動(4hz)の物が多いです。(1秒間に8振動です。)日差は5秒前後(月差150秒)に調整されています。これは果たして時計として正確と言えるのでしょうか?水晶腕時計の振動数は一般的に1秒間32,768hz振動します。月差は普通20秒です。単純に比較すると水晶腕時計方がかなり精度が高いような気がしますが、振動数から考慮すればそうでもないのです。メカ式はクォーツと比較して振動数は3千万分の一にもかかわらず、誤差は僅か7,5倍なのです(振動数が多くなればなるほど正確と言われています)。その事を考えれば、振動数を基準にした時、如何にテンプ機械式が正確であるか解っていただけるかと思います。テンプ機械式がクォーツと比較して価格が高くなるのは致し方ないと言えるでしょうか(逆に言えば精度の割にはクォーツは割安と言えると思います)。機械式の時計の精度を出すために、300年にわたり、多くの時計技術者がいかに知恵を絞って研究し努力してきたか、想像できると言うものです。日差5秒の精度を出すために大変な労力が注ぎ込まれたのです。それに共感を覚える人たちがメカ式時計を買ってゆかれるのでと私は思います(300年間の時計技術者の夢と希望のロマンを買うのかもしれません)。 クォーツは誕生以来まだ30年の歴史しか刻んでいません。そういう意味からまだまだ発展途上の時計と言えるかもしれません。 第142話(サインのつらさ) 時計職人なら、ほとんどの方が分解掃除0H後に裏ブタに日付けと自分の名前のサインをします。この時計は自分が修理したのだという気概と誇りと自信をもってサインを書き入れます(私の場合、CMW T・Iと書きます)。しかしながら精一杯手抜きをしないで完璧に修理したにもかかわらず、サインする事に躊躇する場合が多々あるのです。前回、あるいは前々回の修理者が未熟のために、地板・ネジ等にあっちこっち傷をつけている場合です。 取れない傷の場合どうしようもありません。前回にひどくいじられた時計のOH後、自分の名前をサインしてお客様に渡し、次回修理の時に自店に戻って来ればいいのですが、他店に行った場合、あの人は大きな口をたたくくせにこの傷だらけの作業は何だと思われる可能性が無きにしも非ずという訳です。よって、前回の修理が余りにもひどい作業をしている場合、私は日付けはキチンと入れますが、自分の名前を書き込むのはものすごく抵抗があるのです。やむを得ず書かない場合があります(自分だけにしか解らない記号にしたりします)。先日もGSのOHの依頼を受けました。ムーブを見てビックリ仰天しました。緩急針をヤットコか何かでちぎっているのです。何でこんな作業をするのか想像すらできません(どういう理由でするのか聞きたいくらいです)。当然時間は全然合わない為にヒゲゼンマイを調節して何とか直しました。この場合もサインをするのはやむを得ず差し控えました。 第143話(ゼニスよ、お前もか) なにかしらシェークスピアの戯曲の台詞のような言葉ですが、そう言いたくなる今度のゼニス時計の大幅値上がりです。スイス時計メーカーの中で良心的な価格設定をしていたのがゼニス社でした。それがこの度の豹変ですから誰もがビックリされた事と思います。ここにどれだけ上がったか一例を書いてみたいと思います。昨年の3月まで人気のクラス・エルプリメロ(02.0500.400/24黒)は小売定価29万円でした。それが昨年4月に33万円になり、今度は小売価格50万円になるというのです。これは滅茶苦茶な値上がりといっても言い過ぎではないとおもいます(大幅な円安が進行していれば納得するのですが、1年間で僅か10%位の円安です)。予兆はありました。日本代理店が大沢商会から商売上手なLVMH(ルイ・ヴィトングループ)に変わったことが大きな原因でしょうか(昨年、大沢商会の幹部営業マンが引き続きゼニス日本代理店として取引をさせてもらえないかとゼニス前社長に頼んだところ、日本人がルイ・ヴィトンのバックを沢山買うからルイ・ヴィトングループが資金が潤沢になり、ゼニス時計会社を乗っ取られてしまったと嘆いていたそうです。もう私にはそんな権限がないと)。ゼニスの新社長が、不当に安いゼニス小売価格の見直しをするというような事が時計雑誌に書かれていましたが、私から言わせれば他のスイス時計の価格が高いのであって、それまでのゼニスの価格は適正で妥当な線だと思っていました。高級機械時計を購入される消費者の方は本当に時計ファンなのです。そういう業界にとって大切なお客様を獲物にするようなことは絶対してはならないことと思います。ル・・・・グループの日本支社長がかって物議をかもし出した事がありました。『援助交際までして・・・・のバックを買って欲しくない』と。確かにそうですが、そういう人がはたして何人おられるのでしょうか?・・・・のバックを持っている人の1000人に1人はそういうやましい金で買った人かもしれませんが、大多数の人は一生懸命働いてお金を貯めてやっと買われた人達でしょう。この発言に賛否両論ありましたが私は顧客である日本人を小ばかにしていると感じたものでした。 第144話(受け取らない修理完了品) 各スイス時計のサービスセンターには、引き取り手の無い修理完了品が一杯あると聞きました。予定していた以上に修理料金がかかったために代引き輸送受け取り拒否になり、サービスセンターに眠っているというのです。そういうイワクつきの時計の最終所有権者は誰になるのでしょうか?半永久的に陽の目に当らない運命なのでしょうか?腕時計として充分使用できるのに勿体無い気がします。アンティーク時計のファンの人が見たら垂涎のものが一杯あるに違いありません。私が長浜の実家の時計店にいた頃もやっぱりそういう時計がゴロゴロしていました。5年も取りに来られなかったりしたらもう最悪でした。(ひょっこりと5年ぶりに来られたりしたら再度オーバーホールのやり直しということが時たまありました。二重手間です。)地方の老舗の時計店にはこのように取りに来られない修理の腕時計があるのではないでしょうか?特に大物(掛け時計・目覚まし時計)は実家の2階の部屋を占領するほど一杯あった記憶があります。若干修理料金が見積もりよりも高くなっても引き取って大切に使っていただきたいと思います。 第145話(売れる長持ち商品・背景は) 4月10日NHK番組『クローズアップ現代』で売れる長持ち商品・背景は、の特集をしていました。その中で、シチズンのフラッグシップモデル、『ザ・シチズン』クォーツ腕時計の事が取り上げていました。10年間無償保証、生涯修理対応の画期的アフターサービス体制を取材していました(これは本当に画期的な事でしょうか?)。この番組を見て少し大袈裟だなと思いました(シチズンの方には失礼かもしれませんが)。メカ式ならとうの昔から一生ものなのですから。懐中時計なんか100年以上過ぎたものでも正常に動くものがあります。きちんと定期的に分解掃除を腕の確かな時計職人にかかっていれば、60年以上に使用に耐えられるのがメカ式です。消耗パーツの竜頭、風防、パッキング、のみ確保(代用品でも可)してあれば、ほとんどの部品は旋盤でベッサクができます。一方、クォーツの場合はゼンマイ(強力なトルク)が入っていないために、歯車・地板等が薄く軽く弱く(プラスチック樹脂を頻繁に使っています)作っても大丈夫のようですが、耐久性に疑問があるのではないでしょうか?ROLEX等の機械式と違ってクォーツの歯車の強度は問題にならないくらい小さくて薄くて弱いように思います(小さくて薄くて弱くても使用するのに影響がないのでしょうが)。 メカ式のテンプにあたるステップモーター(永久磁石付き)が全てプラスチックで作ってある物に当りますが、洗浄に大変神経を使います(逆に言えば、洗浄しないほうがかえってイイくらいの代物です。誤って超音波洗浄器で洗ったら、微細な鉄粉が着いて取り返しがつかなくなります)。ピンセットで持てばすぐに形状が変形してしてしまうからです。シチズン・クラブ・ラメールのクォーツのステップモーターはプラスチック樹脂で出来た非常に繊細なパーツ(ステップモーター)でした。クォーツには電子回路・コイル等のパーツがありますが、これらはメカ式と違って耐久性がよくありません。そういう点から言えば、『ザ・シチズン』クォーツ腕時計は長寿命保証の時計といえるかもしれませんが、メカ式と比較した場合全然、命の長さが違います。しかし、クォーツ腕時計ファンの人々にとって大変魅力のある、『ザ・シチズン』クォーツ腕時計です。 |
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