■イソザキ時計宝石店■
時計の小話



第231話(スター選手の腕時計)

読者の皆さんにとって今年はどんなお年だったでしょうか?私にとって、一番うれしかったことは、昨年まで、巨人軍4番打者の松井秀喜選手がヤンキースに入団し、5月のスランプを見事に克服して、シーズン終盤に大活躍したことが、心に残った嬉しい出来事でした。小生は松井秀喜選手が金沢・星陵高校時代からの大ファンでした。天賦の才能に恵まれているにも拘わらず、人一倍努力を続ける、ということを山下・星陵野球部監督もその当時からおっしゃっておられました。松井秀喜さんは、伊集院静氏のインタビューにも答えておられましたが、人の悪口を一切言わないという彼の人生哲学にも私は深い共鳴を覚えました。幼い子達に、夢と希望を与えつづける、野球への真摯なまでとも言えるひたむきな姿勢に多くの人々が、彼に対して喝采を差し上げたものと思っております。ヤンキースのトーリー監督も「彼は誇り高き、男の中の男だ」言っておられましたが、その言葉が私の中に深く刻んであります。(彼に一番相応しい言葉だと思っています。)職業柄どうしても松井選手がどんな腕時計をしているのか?という興味があり、ついつい彼の左腕に目がいきます。渡米する前は、彼の左腕にはトノー型のバシュロン・コンスタンタンらしきものがありました。最近の彼の腕には、パネライのラジオミールが見え隠れしていました。さすがに、超スタープレイヤーは、ファッションにも敏感なものだと思っております。(きっと松井選手もメカ式腕時計が好きなのでしょうね) Mrジャイアンツ・長島茂雄氏はセイコー・クレドールのイメージキャラクターを過去にされておりクレドールの日本での高級イメージの浸透・拡販に多大な影響を及ぼしたものと思います。長島巨人軍永久名誉監督は、おそらく今でもクレドールを何本か所有して愛用されているに違いありません。(服部セイコー時代、セイコーの展示会には長島茂雄監督がゲストとして呼ばれてもおりました。)今年、阪神を奇跡的な優勝に導いた星野仙一監督はウブロを長年愛用されてきたそうです。阪神優勝を記念して限定モデルのウブロが発売されたそうです。(スイス人もなかなかやりますね)熱烈な阪神ファンの方はおそらくこの希少価値のあるウブロ限定モデルを買われたに違い無いでしょう。ローレックスGMT所有者と言えば、日活の大スター、石原裕次郎氏を思い出しますが高橋英樹氏もプラチナ・ロレックスを愛用されていると聞きます。日本テニス界を長年ひっぱてきた、伊達公子選手も国際的な大会で活躍するたびに自分自身へのご褒美としてロレックスを買われていたとのことです。大相撲の力士の人達は金無垢のロレックスを愛用されている人が多いと聞いておりますしNFLのヘッドコーチの人達の左腕にも金無垢のロレックスが燦然と輝いてるのを衛星放送を見ているとよく見受けられます。格闘技ともいえる激しいスポーツには多分、ロレックスが似合うのでしょうか。かつて木村拓哉氏がローレックス・エクスプローラー1をはめているので若人を中心に日本中で爆発的な人気が起こったのが、昨日の出来事の様に思い出されます。私は若いときから、薄型の時計が好きなのでユニヴァーサルの時計を2個愛用してきましたが最近ノモスのオリオン(白)を自分用におろしました。新しい腕時計を身につけるということは、心がウキウキして青春時代の時のような新鮮な気持ちになれるものです。腕時計って不思議なパワーがあるものですね。読者の皆さんにも、思い入れの深い、肌身離さず愛用されている腕時計がきっと何本かあるのでしょうね。

第232話(記念の腕時計)

贈り物をなされる時、読者の方は、まず第一に何を贈ったらいいか?といろいろ悩まれ何を浮かぶでしょうか?会社の創業何十周年記念とか、結婚25年記念とか、大きな節目の時には、腕時計を贈られる方がとても多いと思います。弊店のHPを立ち上げてから、色々な方々から、お父さんや、お祖父さんから何かの記念に貰った腕時計の修理依頼が舞い込む事を考えれば、そういう個人の記念碑的な思い出の籠もった腕時計が沢山とあることでしょう。また、お父様が退職記念に会社から、また勤続30年記念として頂かれたりした腕時計や、勤続何十周年記念として腕時計を会社から頂かれた報償・記念の腕時計の修理依頼も時折きます。おのおの、人達が持っておられる腕時計には、個人の歴史が籠もった腕時計がさぞ多い事でしょう。先日、12月28日のNHK衛星放送を見ていましたら、『永遠のヒーロー 石原裕次郎』という、番組が放送されていました。その中で、石原まき子夫人が、非常に大切に肌身離さず大事にされている腕時計が2本紹介されていました。一昨年の秋に、小樽市にある『石原裕次郎 記念会館』を訪れた時に、裕ちゃんが普段から愛用していた腕時計が、10本以上ショーケースに陳列されていました。まき子夫人が東京の自宅に今も大切に保存されている腕時計は、これらの小樽にある時計ではなく、まき子夫人が裕ちゃんに最初のプレゼントとして、贈られた品でした。それは『OMEGA 角形手巻き腕時計(センターセコンド方式ではなく、インダイヤルセコンド方式)』でした。もう一個は裕ちゃんが、まき子夫人に初めてプレゼントされた『オーデマ・ピゲ 手巻き腕時計』でした。この時計は裕ちゃんが初めてヨーロッパ旅行をしてきた時のおみやげだと、まき子夫人は語っておられました。人それぞれに、他人には想像を絶する大切にされている腕時計があるものだとこの番組を見てしみじみ思いました。石川県に某ベンチャー企業があります。この会社は、0.5mm角の超小型チップを開発した、技術集団の企業です。(この超小型チップは、紙に埋め込めるのが可能なので、パスポートや紙幣の偽造防止などにも将来採用される見込みがある次世代技術として、脚光を浴びています。)マレーシアの当時のマハティール首相が、国家プロジェクトとしてこのチップを採用する事を決め、昨年4月全くのお忍びで石川県の会社に訪問されたそうです。その時、マハティール首相から、高級腕時計『L』・『P』が記念品として贈られたそうです。心の籠もった何十年にも渡り残る贈り物には、腕時計が一番相応しいものかもしれません。

第233話(埋もれたロレックスの名機)

現行のロレックスの自動巻腕時計のムーブメントの最高傑作は、男性用でCal.3135(31石)、女性用でCal.2135(29石)である事に対して、誰も異存を挟む人はいないと思います。最近の傾向として、女性の方でも、大振りのロレックスを求められる方が増え、ボーイズタイプのロレックスが以前にも増して、女性から問い合わせ等が増えています。若い男の人でも、腕の細い人には、メンズのロレックスよりもボーイズタイプのロレックスを求められる人が増えてきています。ボーイズタイプのロレックスには、女性用のムーブメントCal.2135が内蔵しているのが多いのですが一部の機種に限って、違うムーブメントが入っています。 REF.77080(SSモデル定価\338,000)のボーイズタイプのロレックスのムーブメントは、Cal.3135を小型化した、ブレゲ巻き上げヒゲ採用の優秀なムーブメント、Cal.2230(31石)を搭載しています。Cal.2135も優れたムーブメントには間違い無いのですが、平ヒゲゼンマイを採用しており、調整等は易しいタイプですが、Cal.2230は、ブレゲ巻き上げヒゲゼンマイを採用してあり、高度調整力が必要で、時計修理技術者の能力に応じて素晴らしい精度・等時性を発揮するとても良い機械です。他のスイス超高級腕時計、パテック・フィリップ、オーデマ・ピゲ、等がブレゲ巻き上げヒゲから平ヒゲゼンマイへ移行しつつある中、ショパール、ランゲ・&・ゾーネ、等はあえて、調整が難しいブレゲ巻き上げヒゲの機械を採用しつつある事に、敬意を表しざるをえません。(その中でもロレックス社は創業以来から今日まで調速機に巻き上げヒゲに固執し続けた希有な時計メーカーです)ロレックスのCal.2230のムーブメントを採用した腕時計が、30万円台で購入出来る、という事はとても、お値打ちな価格であると、私は思っています。腕時計を購入される時、時計のデザインを重用視しないで、中のムーブメントを最重要視する女性の方や、腕の細い男性の方には、購入の選択肢として、ロレックスREF.77080(SSモデル定価\338,000)をぜひ選んでほしい、腕時計の一つです。

第234話(ドイツのマイスター制度)

日本には、職人の技量を客観的に測る制度に、労働省認定の三級、二級、一級技能士試験があります。昔から緻密な工作機械、飛行機、車、等を生産してきたドイツには、職人の身分を示すのに伝統的な『マイスター制度』が現存しています。800年前のドイツのニュルンベルグのギルド(同業者の組合組織)、ツンフト(手工業者の組合組織)から生じたものと言われております。その頃の、大工、左官、石工、家具、仕立、時計職人になろう!と思った青年は徒弟として、親方職人(マイスター)に弟子入りし、数年に渡り見習い修行をし、職人として認められる様に努力したものです。その制度は、今日のドイツにも継承され、多くの腕利き親方職人を育てあげています。(世界有数の工業国家として世界に認められた事実には、こういう社会の底辺から職人がしっかり屋台骨を支えているからなのでしょう。) ドイツで国家資格の『マイスター試験』を取るには、高卒後、最短で6年が必要と言われています。高校卒業後、各地方の職業専門学校に入学し、実務と知識を習得し、まず第一段階として職人試験に合格しなければなりません。職人試験に合格後、さらに上のマイスタ−を取得する為には、親方職人の元で、実務経験をさらに積み上げる方法と、放浪職人(ヴァルツ呼ばれている)になって各地方・各国家を放浪して、三年と一日間、実務の経験・勉強をしながら、旅をしつづけるという、苦難に満ちた過酷な運命・試練に自らを委ねなければならない、という方法があります。自らを奮い立たせる気力・体力・精神力を持続させ、成就した青年のみが、国家試験の『マイスター試験』を受ける事が出来、合格後、栄えあるマイスターと名乗る事が出来るのです。現在、この過酷な放浪職人をしている青年が150名に上るという事をNHK衛星テレビで見て、彼らの職人に対する熱情を推し量る事が出来、とても感動を覚えました。(1880年代が全盛期で独逸各地で帽子をかぶり杖を持った放浪職人が一杯見受けられたそうです。その彼らをドイツ国民は尊敬し温かい眼差しで応援していたそうで、その気持ちは今でも脈々とドイツ国民に受けつながられているそうです。) 放浪職人の青年達はヨーロッパ中の7、8カ国を徒歩で、歩き回り、多い人になると3年間で、8000kmを歩き回るらしいです。服装も黒ずくめで、ベストには8個のボタンがありその意味は『一日に8時間労働する』という意味だという事です。また上服(ブレザー)には、6個のボタンがあり、その意味は『一週間に6日間労働する』という意味だという事です。放浪職人は、実務記録帳(ヴァンダーブーツと言われています)携帯し、三年間の放浪中、どこの親方職人(マイスター)の元で、仕事をしてきたか、あるいは、親方職人からその仕事ぶりの評価を実務記録帳に書いてもらうという義務があるのです。三年間の放浪後、その実績が認められ、マイスター試験の受験資格が与えられ、合格すれば『マイスター』の認定書が国家から授けられるという仕組みが、現在のドイツでも歴然と残っている事に感銘を受けました。私の若い頃にも、腕の立つ若い時計職人が、2,3年毎に著名な時計親方職人のいる時計店を渡り歩いている姿を多く見かけました。彼らは、親方時計職人から色んな、技を修得し、さらに上を求めてまた、違う親方時計職人の店で働くという、研鑽を積み上げていったものです。そういう私も、福島県の菅波錦平先生、大津の行方二郎先生、大阪の加藤日出男先生、神戸市の小原精三先生の元で教えを請い、修行をしてきたのがこのテレビ番組の放浪職人を見て、懐かしく思い出されました。

第235話(ネジについて)

30年〜40年以上も使用され続けてきた、腕時計のオーバーホールをする時には、簡単な作業でも細心の注意を、払わざるを得ない時があります。特に、極薄の自動巻腕時計の時のネジを締める時に、起こる場合が多いです。(極薄の自動巻腕時計・手巻腕時計の場合はネジが薄く・小さく・軽くなるためです。)それは、丸穴ネジや側留めネジ、文字板留めネジ、等を緩める時や、締める時に、ネジ頭が折れてしまい、オネジ部分がメネジ部分に、埋め込まれてしまう場合がある時です。折れ込んだ、オネジ部分を抜き取る作業は、簡単な様で大変な目に遭います。何回もオーバーホールをしてきた時計ですと過去の於いてネジを何回も緩めたり締めたりしているためにネジ部が金属疲労で劣化していてちょっとの力具合で折れてしまうのです。(一つのネジを抜き取るのに2時間以上の必要な時も往々にしてあります。)分解途中で折れ込んだ場合は、マシですが、洗浄後、組立注油作業中に折れ込んだ場合は非常にやっかいな手のかかる作業になります。ピンセットの先端で回しながらオネジ部分が抜ければたやすい事なのですが、オネジ部分がメネジ部分の上にでていない場合は、ピンセットで回しながら抜き取る訳にもいかず、メネジ部分に油を差したり、折れ込んだ部分に熱風を与えたりして、抜き取る作業をしますが、それでも、オネジが抜き取れない場合、ポンスで、叩きだす以外、方法がありません。無理矢理ポンスで叩き出した場合には、メネジ部分のネジ溝が壊れる為に、タップでメネジ部分のネジ溝を作って、前回よりも、やや口径の大きいオネジを使って、ネジ留めします。その作業によって、その部分がどうしても汚れてしまう為に、また分解して洗浄注油をしなおすハメに陥り、大変な時間の消費を食らってしまいます。スイス時計の日本サービスセンターやセイコー・サービスセンターが30〜40年前の修理依頼があっても断る原因の一つに部品が無い為に、やむを得ず断る場合もあるでしょうが、オーバーホール作業中に、ネジ折れが頻繁に起こりうる可能性がある為に、作業段取りに手間がかかり、断っているのが実状ではないのかな?と思っています。今まで、何十種類もの、腕時計のオーバーホールをしてきましたが、唯一安心して、ネジを緩めたり、締めたり出来る時計メーカーは私にとってはロレックス社のみでした。特に、C社の丸穴ネジ・角穴ネジは折れやすく、いつも「折れるのではないか?」とビクビクしながら、作業をしたものでした。新品購入後、最初のオーバーホールが一般的に一番大切である、と言われているのは、「ネジ部」「カナ部」に起因する事なのです。鋼鉄製のオネジと、地板に使用されている真鍮合金製のメネジ部を、締める時や緩める時に、必ず、ネジ部どうしの大きな摩擦により、真鍮の微細なクズ粉、鋼鉄部の微細なクズ粉が生じて、それらが、時計の心臓部や歯車のカナ、穴石等に付着したりして、大きな故障の原因になる場合があるのです。(勿論、カナ部と歯車の歯との噛み合いによってもクズ粉は生じます。)よって、新品購入時からの最初のオーバーホールの時は、3年〜4年を目安にして、オーバーホールを依頼された方が良いと思います。最初のオーバーホールは超音波洗浄にかける前に必ず十分な刷毛洗いが必要なのはこのクズ粉をきれいに取る為なのです。


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