| ■イソザキ時計宝石店■ |
| 時計の小話 |
第41話(最近の腕時計の消費動向について) 最近、電池交換でご来店されるお客様の腕時計を拝見すると、どうみても2千〜5千円位の低額の時計がほとんどです(高くても1万円前後の腕時計の電池交換が多いのです)。一人のお客さんが一度に数個の安い腕時計ばかりの電池交換にご来店されるとウンザリ?(ちょっと失礼かな)してしまいます。電池交換の10個のうち8個はそんな廉価なクォーツ腕時計で、益々その傾向が顕著になって きたような気がします。不景気という時代背景があるかもしれませんし、地域的か何か他の特殊な原因かもしれません(他店より電池交換料金をかなり安くしているため?)。時計宝石店を経営していて、毎日ガッカリする今日この頃です。ここ数年、ロレックス等の高額品を買われる人と極端な低額品を買われる人との二極化が ますます進展したようです。中級品の5〜10万円を購入される人がかなり減ってきていると感じます。昔、腕時計は貴重品で、旅館に宿泊した時はフロントに預けたものですが、 そんな風潮はもう無いと言ってもよいかもしれません。日本人は腕時計に金をかけた民族と言うのはもう昔のことで、TPOにあわせて安くても正確に動けばいいと言う人たちが確実に増えてきたようです。一度目の電池交換時ですら、もう動かない腕時計によく直面します。国産のある時計メーカーの安価なアナログクォーツ腕時計の3個に1個は一度目の電池交換時にすら動かないムーブメントが入っています。時計店で買わなくてもどこでも、そこそこ時間のあう時計が安く買えるために、時計店及びメーカーが斜陽化していったものと思われます (後継者問題もありますが、若い人たちにとって魅力がない業界の一つかもしれません。 スイスも20〜30年程前のクォーツ腕時計化のため若い人々が時計メーカー業界に入らず、 技術者の空洞化現象が起きたのです)。靴下のはき捨てのように壊れたら修理しないでポイと捨ててしまうような腕時計を 身につけることはなんだか寂しいのではないでしょうか。このメールマガジンを愛読しておられる方々は、時計の大好きな人々だと思います。そして長くご使用に耐えられる、愛着がおきる良い時計を1個か2個お持ちだと思います。こういった方々をこれから大切にしていかないと、この業界は益々沈澱して行き、 明るい時計業界の未来が無いと言っても過言ではないでしょう。低価格のクォーツ腕時計は地板・歯車にプラスチック樹脂を多量に使っている為に、私などはいくら正確さが抜群であろうとも、精巧なオモチャのようにしか思えてなりません。その点、メカ時計は芸術的な精密機械と思えるほどムーブメントは美しい動きを致します。防水性能がしっかりした、裏蓋がスケルトンのメカ時計をメーカーはもっと生産すべきだと思います。あの美しい動きの姿を見たら、安いクォーツ腕時計を買う消費者の人達も、きっとメカ時計に回帰してファンになるに違いないでしょう。特殊な職業人を除いて、1日に30秒狂ったところで、何の生活に支障をきたすでしょうか。秒刻みの生活よりも、ノンビリとゆったりと生きて行きたいものです。 第42話(女性用・機械式腕時計について) ここ十数年のスイス及び日本の時計メーカーの機械時計復活にかける情熱は目を見張るものがあります。しかし残念ながら、女性用のメカ時計の再生産の噂をあまり耳にしません。メカに弱い女性(失礼御免なさい)が多い為、そういうニーズがないので敢えてメーカーが 作らないかもしれません。生産をしたところで採算ペースにのせるのは至難のワザでしょう。これまで安定して女性用のメカ時計をたゆまず市場に供給してきたメーカーはロレックス社一社のみだと思います。かってはセイコー・シチズン・オメガ・ロンジン等の有力メーカーも婦人用の手巻き・自動巻の腕時計を盛んに作っており、新しいムーブの開発にも力を注いでおりました。女性用を商品化するために小型化(径20mm以内)・軽量化・薄型化は非常に難しいものなのです。デザイン優先の女性消費者の皆さんは、中の機械がクォーツであれ、メカであれ、 あまり関心が無い為かもしれません。男性は車のメカにも非常な興味があるように、腕時計のメカにも興味があるために機械式が復活したのでしょう。ハッキリわかりませんがアンティーク市場にも女性用のメカ時計の取引は皆無の状態なのではないでしょうか。そういったことを考慮してみますと、ロレックス社の姿勢は他社よりも群を抜いていると思います。ハッキリした方針があるために、水晶腕時計が出現した時も何ら慌てる事もなく 女性用機械式腕時計を自信を持って作り続けたのに違いありません。防水性・耐久性・機能・精度等の総合力を判断して女性用も自動巻腕時計が最高と決断したものと思われます。ロレックス社は1954年に婦人用自動巻腕時計をつくっております。1972年に発売したキャリバー2035,2030を搭載したロレックス婦人用自動巻腕時計は緩急針調整のヒゲ棒が人造ルビーで出来ており、大まかな所はそこでやり、マイクロステラ微動調整用特別スパナーで秒単位の微調整が可能の素晴らしいムーブメントでした。28800振動で、ロレックスには珍しい平ヒゲを採用しておりました。これほどの美しい婦人用自動巻ムーブをいまだかって見たことがありません。ロレックス・レディ・デイトジャスト69173型の現行のキャリバー2135、 29石も2035に劣らず秀逸でしょう。女性の方で機械式が欲しい方は、予算が許せば迷わずロレックスが一番でしょう。ロレックス等の小型の婦人用自動巻ムーブは磁気にとても影響を受けやすく、 急に誤差が出てきた場合、それを疑った方がよいでしょう。時計店でいとも簡単に磁気を抜く工具があり、どの店でも無料でやってくれるでしょう。冷蔵庫のドア、ハンドバックの留め具などには磁石が使われており、注意が必要です (磁気ブレスをして腕時計をするのは論外でしょう)。 第43話(時計職人の要望と期待) 弱冠24才でCMW資格を取得した私は、当時父の時計店を手伝っておりました。アメリカのベンラス時計に留学出来なかった私は、どうしても海外に出て腕を磨きたいと いう夢があり、カナダのロレックスサービスセンターに手紙を出し就職を依頼しました。私の友人の竹内一詔氏(CMW)もカナダのバンクーバーで時計職人として働いていたからです。快諾を得ましたが、いろんな反対に遭い断念せざるを得ませんでした。それじゃ日本のどこかのサービスセンターに入ろうかと思いましたが、それもいろいろ考えてやめました。サービスセンターに入った場合、一つか二つのメーカーの腕時計ばかりする事になり、単調になって飽きてしまうのではないかと思ったからです。いろんなメーカーの腕時計(掛け時計・置き時計の修理も大変好きでした)の修理を したかった私は、そのまま時計店で修理の腕を磨く事に専念しました。手引き書(マニュアル)通り何も考えずに分解組立するよりも、パーツの役目等試行錯誤 しながら分解・組み立ててゆく方に時計職人としての醍醐味が味わえると思ったからです。複雑時計になると部品数が200前後になる為にスケッチをして忘れないようします。組み立てる時はまさしく2000ピースのジグソーパズルをとく心境です。考えながら組立調整するのは時間がかかりますが、その時計の持ち味がよくわかります。先日も少し水の入ったセイコークルージングマスター7k36A(多軸9針、定価10万円の品、発売後5年くらいで生産中止か?)の修理依頼を受け分解掃除をしましたが、組立部品数92個と、クォーツとしては割と多い方で厄介な難物でした。出来上がった時は疲れてはてて感動はありませんでした。メカ時計で難物の場合、やはり疲れますが修理完了時には必ずいい知れない喜びがつきまといます。メーカーの設計技師の方には、このようなクォーツの複雑時計はもう作って欲しくないものです(我が儘な要求ですみません)。日本での時計職人として最高の評価を得ておられる日本時計師会元会長:井上信夫先生は、スイス・タバン社製の超複雑の自然打携帯時計(あまりの複雑さ故、著名などこの時計店、 時計メーカーへ持っていっても断られた時計と依頼者は言ったそうです)の修理を頼まれ、数ヶ月かかって直されたことを以前、本に公表されましたが、その時の喜びは時計職人しか解らない身震いするほどの、ものすごいものだったと言っておられます。難解なクォーツ腕時計の修理にはこういった感動はあまりないと思います。私も今まで数え切れないくらいクォーツ腕時計の修理を致しましたが、何ら感動、印象も受けません(どんな高価なクォーツ腕時計でさえ。まだテンプ式のエレクトロニック腕時計や音叉腕時計の方が感動したり感銘を受けたりします)。接客して時計の修理を預かる時、どんな方がどんな時計を身につけているのかとても関心があります。また故障の具合を問診して尋ねるのも大切な事です。どんな使い方をされてるのか知る事により、故障の原因(どのような腕時計であれ、水・汗・磁気・衝撃が最大の敵ですが)等が推測出来るからです。読者の方も修理依頼する時は出来うる限り故障の状態を詳しく伝えるのがイイでしょう(サービスセンターに勤めているとそういう情報は手に入りにくいかも知れません)。以前卸商に聞いた話ですが、京都の少し落ちぶれた?(失礼)老舗の時計店に身なりのイイ お客がぶらっと来店し、時計革バンドを購入されて、その時接客した店の修理担当の番頭さんが その客の腕時計を大変気に入り、サービスでケース・風防磨きをして上げたところ、いたく感動したそのお客さんは、それ以降その番頭さん指名で数年に渡り高額の贈答品を大量に注文したとの事です。そのお陰でその店は押しも押されぬ大店になり、現在大いに繁盛 しているとの事です(そのお客さんは大手一部上場商社の社長さんだったらしいのです)。そういった出会い・ご縁が店をやっているとあるという事です。商売していると毎日気は抜けないですね。たとえどんな細かいお客様でも。 第44話(クロックのムーブメントについて) 先日、N町のNさんというお客様の所にお伺いしたところ、居間の柱にセイコーソノーラという本打式のトランジスタ振り子掛け時計がかかっておりました。聞くところによると35年間一度も分解掃除しなくても正常に動いているとの事でした。5cm四方のコンパクトな機械でしたが、まさかここまで動くとはビックリ仰天でした。私もセイコーソノーラを何回となく修理したので、簡単で良い機械であった事を覚えて いますが、ここ最近はほとんど修理していないものでした。改めて、さすがセイコー舎だと感心しきりでした。セイコーコロナ目覚まし時計も何回も修理の耐えられるしっかりした地板の目覚まし時計でしたが、さすがにもう見かけません。今では骨董価値があるかもしれません。その点、現在流行のからくり時計は何年使用に耐えられるか見物です。メーカーの人に悪いのですが、よくもって7年〜10年が限界ではないでしょうか。おそらく10年過ぎれば修理不能でしょう。至るところにプラスチック樹脂を使っている為に、昔の時計のように30〜40年も使えないものです。昔のウェストミンスターチャイムのゼンマイ式置き時計や重鎮式のホールクロック置き時計も素晴らしい機械で、所有されている人は大事に残したいものです (どの国産メーカーも生産中止しています。もう二度と手に入らないでしょう)。 第45話(ジャガー・ルクルトについて) IWC(インターナショナル)、ジラールペルゴーに優るとも劣らない時計一貫メーカーの中に、ジャガー・ルクルト(ムーブメント供給メーカーでもあります)があります。数あるスイス時計メーカーの頂点に位置する高度の技術力、先進的な開発力をたゆまず維持してきたメーカーの一つです。 アントワーヌ・ルクルトが、スイス・ルサンティエにて1833年に創業した歴史的に由緒ある会社です。非常にレベルの高い腕時計を生産しているために年間生産数は約4万前後と少量ですが、どれをとっても素晴らしい時計ばかりです。ジャガー・ルクルトといえば今から30年程前に、径20,50mm厚さ1,50mmという工芸的な世界最小の極薄2針手巻き腕時計を開発した事で有名です。50円玉硬貨の大きさで、厚さ(1,75mm)はそれよりも薄いといえば皆さんビックリされると思います。テンプのアームを2段階にして、窪んだ所にヒゲゼンマイをセットするという離れ業で薄くする工夫がなされているのです。厚さ2mm以内の極小ムーブメントを開発成功した時計メーカーは今まで僅かにしかなく、パテック・ピアジェ・バセロン・オーディマ・コルム・インター・オメガ・セイコーという名だたる時計メーカーが連ねております。ムーブを薄型化・小型化する事は、大変な設計力・技術力を必要とする事なのです。また、世界で1番小さいリビエという手巻き2針の婦人用ムーブメント(21600振動、19石、パーツ数98個)を開発しています(縦14,00mm×横4,80mm× 厚さ3,40mmという大きさで読者の皆さん物差しで一度想像してみて下さい。 こんなにも小さなムーブでありながら1日ちゃんと動きそして時間も正確なんて、 どう考えても不思議ですね) 。ジャガー・ルクルトを世界的に有名にしたもう一つの技術に、1930年に発明した気温の変化をエネルギー源として駆動する(アトモス)置き時計を作ったことでしょう。ゼンマイを巻き上げる必要もなく、電池を入れ替える必要もない置き時計で、その当時ではセンセーションを起こしました。各種レベルソに搭載された角形ムーブメントのトゥールビヨン、ミニッツリピーター、永久カレンダー、クロノグラフも自社開発しております。そのことを考慮すれば、ある一面に置いてはロレックス社、インター社よりも、かなり上を行く時計メーカーと言って差し支えないかもしれません。地方都市にて時計店をしております関係上、なかなかジャガー・ルクルト腕時計の修理におめにかかれないと言うジレンマがあります。その点ジラールペルゴーと一緒でもっともっと修理をしてみたい腕時計メーカーの数少ない 一つです。ジラールペルゴーと同じく日本でもう少し売れてもおかしくない時計です。日本でのネームバリューが少し弱いのと価格が高い(高くて当然なのですが)ために 普及が今一歩と言うところかもしれません。しかし本当の時計通の人は買っているに違いないでしょう。 |
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