■イソザキ時計宝石店■
時計の小話



第276話(現行の傑作自動巻ムーブメント)

現行の自動巻ムーブメントの、秀逸なキャリバーと言えば、 まずすぐに頭に浮かぶのはロレックスのCal.3135(ブレゲ巻き上げヒゲ採用)と、Cal.3130(平ヒゲ採用)でしょうか。 他に、いろんなスイスの高級ブランドの自動巻腕時計に多く採用されている 汎用ムーブメントにETA2892-A2があります。思いつくままに、ここに数年有力時計メーカーが、出した自動巻腕時計の傑作ムーブメントを、並べてみたいと思います。 やはり、まず国産のGSに搭載されている、Cal.9S55でしょう。 このムーブメントは、毎時28800振動でGS規格、日差-3〜+5(静的精度)に 収められている高精度を発揮する、ムーブメントです。 このムーブメントはセイコーのフラッグ・シップのGSに搭載されているだけに セイコー社が満を持して出してきた腕時計と言えるでしょう。ピアジェ社が生産している、Cal.504Pは、薄型自動巻ムーブメントで、 パワーリザーブは40時間を保ち、毎秒6振動のロービートながら、 高精度超寿命設計のムーブメントに仕上げています。 メーカーの話によると、このムーブメントを製作するには、 800以上の作業工程が必要とされいかに念入りに作られているムーブメントであるか、 判るというものです。IWCの腕時計は、ベースにETAの自動巻ムーブメントを搭載している時計が 多いのですが、その中で、かつてのインターナショナル時代の名機を、 彷彿とさせるキャリバーが開発されています。 Cal.5000がそれで、7日間のロングパワーリザーブで、このムーブメントを 開発するにあたり、4年半という、長い期間を必要とされたことを思うに付け、 いかにIWC社がこのムーブメントに対して、入れ込みの強さが判るというものです。この自動巻はインターナショナルが、初めて考案したベネトン方式を 再登場させていて、見るからに、懐かしさがこみ上げてくる造りになっています。 IWCファンには見逃せない時計になっています。オーデマ・ピゲ社の傑作自動巻ムーブメントに、Cal.3120があります。 このムーブメントは、パテックフィリップがお家芸としている、 ジャイロマックス式テンプを採用しており、カレンダー機構はデイトジャスト式で パワーリザーブは、60時間を保つという優れもののムーブメントで、 毎秒6振動のロービート式です。ここ数年、機械式ムーブメントで、目を見張る新作を次から次へと開発している 時計メーカーにショパール社があります。 中でも、Cal.LUC1.96は、ツインバレル方式のオートマで、マイクロローターを 搭載している為に、薄型でありながら、パワーリザーブが65時間という 優れた美しいムーブメントです。 マニュファクチュールの一員でもあるジラールペルゴ社も、 ムーブメントの厚さ3.28mmの薄型自動巻Cal.GP3300を開発しており、 このムーブメントを採用して、ビッグデイト、ムーンフェイズ機能を 併せて持たせています。最後に、宝石の様な、煌めきを持つ自動巻ムーブメントに、 ランゲ&ゾーネ社が出している、Cal.L921.4があります。 昔懐かしいスワンネック型の緩急針を採用しており、 四方に散りばめられた青ネジがサファイアの様な光芒を放っていて、 見る物の目を奪ってしまう程の完成度の高い極め付きのムーブメントと言えそうです。これらのムーブメントを搭載した時計は、どれも100万円以上する代物ですので、 おいそれと誰もが簡単には入手出来ないのが、非常に残念な事ですが、 これらと同等の造り映えをしているロレックス社のCal.3135が いかに良心的でお値打ちに作られているか判るというものです。

第277話(不思議な事)

神奈川県のK様から、お母様の愛用されている、 アンティーク・インターナショナル手巻婦人用腕時計(Cal.41 17石 ムーブo.1604943)の修理依頼を受けました。 このムーブメントは、以前にも十数回以上OHした経験があります。 かつてのインターナショナル社のイメージ通り、手抜きした所が全く見つけられない 完璧な造りがされている機械です。 婦人用手巻き腕時計で、ここまで、完璧に作られたムーブメントを内蔵している 腕時計を新品で入手する事は、現代では、大変難しいことになっています。近年ドイツのランゲ&ゾーネ社が、婦人用手巻き腕時計『グランド・アーケード (定価1,950,000円)』を発売しましたが、これに搭載されている、 ムーブメントに劣らない程の造りをされている腕時計です。 造り映えも少し似ている感じがします。オーバーホールを完了し、ケースを超音波洗浄で洗いましたところ、 裏蓋に日本の大蔵省造幣局シンボルの日本国旗のマークと、Pt900と、 刻印されていて驚きました。 スイス製腕時計で貴金属を素材として、ケースを作られている場合、 K18イエローゴールドとK18ピンクゴールドがメインです。 白色貴金属ケースはほとんどが、K18金ホワイトゴールドを素材として作られています。 まれにプラチナを素材としたケースも無い、という事はありませんが、 非常に珍しいものです。日本に、造幣局検定マークがあるように、スイスにも、各州に 『ホールマーク認定検査局』があります。 各州毎に、特徴のある女性の横顔の刻印がケースの裏側に押さえ刻んであります。 このK様のアンティーク・インターナショナルに、 スイスのホールマーク認定検査局の印が無いのが不思議な気がしました。恐らく、日本女性は昔からホワイトゴールドよりも、プラチナの嗜好が強い為に、 あえて日本人女性向けに、あくまで想像ですが100本ないしは、200本を制作して、 このケースの検定依頼の為に日本大蔵省造幣局に持ち込んだものと推測しています。 非常に、まれなパターンではないか?と思っています。日本大蔵省造幣局は、ある貴金属メーカーから聞く所によりますと、 検定依頼を受けた商品が100本あるとしますと、 無作為に2、3本取り出して、それを溶解、分析して、それ相応の純度が適量に 含有されているか調べるという事です。 無作為の2、3本を調べてそれが適切な場合、残りは間違いないと判断して 刻印するシステムです。プラチナ加工技術に於いて、日本の加工技術レベルは世界トップクラスなので、 日本でこのインターナショナルのケースを当時の日本輸入総代理店、 シュリロ・トレーディング・カンパニー・リミテッドが日本女性向けに、 日本でこのケースを作った事も考えられない事は無い、と思います。 それにしても面白い不思議な事実でした。

第278話(オメガ・シーマスター No、1)

ダイバーズウォッチと言えば、すぐにみなさんの頭に思い浮かぶのは、 オメガ・シーマスターとロレックス・サブマリーナだと思います。 弊店の修理履歴を見ていただいても、オメガ・シーマスターが、 日本の方にいかに多く愛用されてきたか、解っていただけると思います。 四方を海に囲まれた海洋国家、日本の国民にとって、ランドマスター系よりも、 シーマスターやサブマリーナに人気が集まったのも頷けます。海への憧憬が強い国民性の日本人にとって海馬シーホースをシンボルマークにした オメガ・シーマスターを持つことは自己満足以外にも優越感を味わえたのでしょうか。 数あるダイバーズウォッチの中で、オメガ・シーマスターと ロレックス・サブマリーナは東西の横綱を張る大看板に相違ありません。オメガ・シーマスターは、1948年にハーフローター方式の自動巻キャリバーCal.341を 搭載して初めて世の中に登場しました。 (ロレックス・サブマリーナはオメガ・シーマスターより遅れて1953年登場でした。) 当時としては、水深60mに対応する防水性能を備えていました。 発売当初から、シーマスターには、いろんなバリエーションの腕時計が次から次へと 登場して世界中の時計ファンを魅了しています。自動巻(オートマチック)もあれば、手巻き(マニュアル)もあり、 センターセコンド方式もあればインダイヤルにスモールセコンド方式も 採用されていて、ユーザーの好みにあった腕時計を 選択出きるのも、人気を博した一因なのかもしれません。 何よりもデザインだけではなく搭載されているムーブメントが 他社時計メーカーよりもダントツに勝れていたからでしょう。現行のオメガ・シーマスターには、Cal.1120(23石、ベースムーブメントETA2892A2)を 搭載しているものが多いです。 かつてのシーマスターに搭載されているムーブメントで、非常に優れた名機が 存在したので読者の方にお知らせしたいと思います。手巻きの30mmキャリバーのCal.284(18000振動、17石、1955〜1959年製造)、 Cal.285(18000振動、17石、1958〜1961年製造)、Cal.286(18000振動、17石、 1961〜1963年製造)等は、ブレゲ巻き上げヒゲを採用していて、特にCal.286は 1963年の天文台クロノメーター・コンクールで最高の精度記録に輝いた 栄光の腕時計です。これらのムーブメントを搭載した、オメガシーマスターはアンティーク市場で、 最近、爆発的な人気を博し、なかなか手の届かない高価格に、なっているのが 現状です。 (e−beyで安く買っておられる知人もいますので参考にして下さい) オメガ・シーマスターの自動巻キャリバーでつとに有名なのは、 Cal.560台のムーブメントシリーズでしょうか?その中で最終ムーブメントモデルCal.565(24石、19800振動、1966〜1973年製造)は、 地板を赤色金メッキされた、耐久性のある美しい高精度が出るムーブメントで、 今なお、多くの人に愛用され続けている自動巻腕時計です。 1970年代になりますと、28800ハイービート振動のCal.1010、1012(1973〜1983年製造) が登場しました。 このムーブメントは、部品総数が多く、各パーツも繊細で薄型・小型化 されている為に、修理するのに高度な腕前が必要とされる、 ムーブメントであったのではないか?と思います。 (Cal.1010はクォーツの黎明期に重なったために、余り売れなかったのではないか と推理しています)若い人達に圧倒的な支持を受けているオメガ・スピードマスターも、 シーマスターから派生的に誕生した事を思えば、現代のオメガの隆盛は 過去のシーマスターのおかげだと言えなくも無い、と思わざるを得ません。 それ程、シーマスターはオメガ社の代名詞になっている時計です。

第279話(オメガ・シーマスター No、2)

オメガ・シーマスターの多種多様なシリーズの中で、過去に優秀なモデルが あったので、読者の皆様にお知らせしたい、と思います。 メカ式アラーム機能付き腕時計と言えば、ジャガールクルトのメモボックス、 バルカン・クリケット、国産ではセイコー・ビジネスベルマチック、 シチズン・アラーム等が、有名ですが、オメガにもシーマスター・メモマチック という腕時計が存在しました。このメモマチックは、クロノグラフ製造で有名なレマニア社から、 ムーブメントの供給を受け、1970年からオメガ社で発売されました。 このCal.980は、非常に精密度が高い機械で、アラームの開始時刻を設定された 1〜2分の誤差以内でセットする事が可能でした。 それまでのメカ式アラーム腕時計のアラーム時刻の正確さは、 3〜5分が許容範囲だった事を思えば、いかにオメガのメモマチックが 正確に作られていたか、解っていただけると思います。当初のオメガシーマスターは、どちらかと言えば、薄型に作られていて、 その大きな要素にワンピース・ケース(ユニコック・ケース)が 採用されていたからです。 このシリーズは、シーマスター・コスミックとネーミングされたりして、 ビジネスマンによく似合うシンプルな時計として人気を博しました。風防の外端周囲には、わずかなミゾが削られていて、 エクストラクター専用工具でいとも簡単に風防の取り外し、及び交換が出来ました。 アンティーク・インターナショナルにも同じ様なワンピース・ケース方式が 採用されていて巻き真が中央で二本に別れる、ジョイント方式をオメガ社も 採用していました。シーマスターにも、クロノグラフモデルがありましたが、 セカンドモデルは、Cal.321を改良して、1968年にCal.861を搭載して、 発売されました。 このキャリバーはレマニア社の著名な時計技術者・アルベール・ピゲ氏が 創り出したものでした。 このムーブメントは、現行のスピードマスターにも引き続き伝承され、 今日でも最高のカム式クロノグラフ・ムーブメントとして歴史に名を残しています。 この頃のシーマスター手巻きクロノグラフのデザインは、今でも通じる斬新な デザインでカラーを多く取り入れ、復刻版が出れば、オメガファンでなくても、 かなりの人気を得るものと思っています。シーマスターの発売当初は、水深60M防水が基本性能でしたが、その後、 シーマスター120や、シーマスター200、へと自然な成り行きで防水性能が 徐々に高まっていきました。 ファーストモデルのシーマスターには、名機で有名な自動巻Cal.560番台 (特に562,564,565)が搭載されていましたが、それ以降は、高振動の繊細な ムーブメントCal.1002、1012、1020等が搭載されだしました。 1970年に発売された、シーマスター600プロプロフを遙かに凌駕する、 シーマスター1000Mプロフェッショナルは、1971年に発売され、 オメガの最高度の超防水性能を誇る腕時計として、オメガ社の歴史に燦然と 輝いています。 いろいろと書いてきましたがオメガ社の技術開発能力の甚大さには あきれるばかりでした。

第280話(オメガ・シーマスター No、3)

手巻きのシーマスタークロノグラフが、登場して後、1971年〜1978年にかけて Cal.1040  28800振動を搭載した自動巻のシーマスター・オートマチック・ クロノグラフが世の中に出てきました このクロノグラフは3時位置に、瞬間日付変更するカレンダー窓があったので、 60分積算計のインダイアルが設置できず、ポインターデイト方式の先端が クロスの形をした先端が赤色針で分表示をしていました。 クロノグラフは、一般的に三ツ目が多いのですが、このクロノグラフには インダイアルが二つしか無い、という個性的な顔をしていました。 発売後、30年以上経過しているので、クロノグラフ機構のパーツが入手出来ない為に、 輸入元サービスセンターでも修理は出来ない状態になっているのが、 残念な点であります。このシーマスター・オートマチック・クロノグラフには、120m防水モデルも発売され、 当時のスポーツを愛する若人には、熱烈な支持を受けた腕時計でした。 1970年以前ののオメガ社のメカ式腕時計の完成度はセイコー社のかなう敵では無く、 世界の中でロレックスと共に圧倒的な地位を得ていました。 しかし1969年にセイコー社がクォーツ・アストロンを発売するにあたり、 精度の面で今までセイコーよりもかなり上位にいたオメガ社であっても クォーツの精度に敵わず、オメガ社も腕時計のエレクトロニクス化に 一路驀進したのです。 オメガ社がまず、目をつけたのが、国産のシチズン社と同じ様に、 音叉式腕時計でした。 セイコークォーツに遅れる事一年、1970年に音叉式腕時計、 シーマスター・エレクトロニック f300Hzを発売しました。 この、シーマスター・エレクトロニック f300Hlzは、 1960年にブローバ社が発売した音叉式腕時計アキュトロンから技術供与を受け、 オメガ独自の音叉腕時計に改良して、Cal.1250を搭載して、発売されました。この、オメガ音叉式腕時計の機械は、赤金色メッキを地板に施し、 時計職人をうならせる素晴らしい出来映えの音叉式腕時計でした。 1973年には、Cal.1250をさらに高振動化させ、 オメガシーマスター・メカソニック 700Hzを開発し、発売致しました。 このオメガシーマスター・メカソニック 700Hz(Cal.1220)は ブローバ社アキュトロンを開発した天才時計技師、マックス・ヘッツェル氏が スイス電子時計センター(CEH)に移籍して、新開発したムーブメントで、 以前の音叉式腕時計の精度よりも遙かに上にいっていた上級音叉時計でした。この様に、オメガ社は音叉式腕時計に固執して素晴らしい音叉式腕時計を 世に問いましたが、クォーツの廉価版が出てくるにあたり、 到底コストと精度の面で立ち向かう事が出来ず、 短命に市場から消え去る運命を背負っていました。 このことはシチズン音叉式腕時計・ハイソニックが短い期間に消えていった運命と 同じ道を辿りました。 現在でも、オメガ音叉時計を所有している人は極めて少ない人だろうと、思います。


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