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国際時計通信『水晶腕時計の興亡』
時計の小話
続・時計の小話
121話〜140話

●時計の小話 第101話(高級アンティーク懐中時計の修理依頼)●

千葉県の読者の方より、アンティークのバセロン・コンスタンチンとティファニーのK18金側懐中時計の修理依頼が舞い込みました。

バセロン・コンスタンチンのムーブメントはCal、391318で21石でした。
勿論ブレゲ巻き上げヒゲで、4〜50年前の物にもかかわらず、奇麗な仕上げがなされてあり、OH調整の結果、テンプ振り角が300度まで復活しました(今は実測計測中。タイムグラファーは瞬時の歩度測定なので、最終的には24時間の実測が決め手になります)。
緩急針調整機構は、1904年にパテントを取得した微調整の出来る機能付きでした。

ティファニーの方はムーブの厚さが2,08mmの極薄タイプで、ケースだけではなく文字板にもK14金を使っているという贅沢な高級品でした。
ヒゲゼンマイは薄型の為に平ヒゲゼンマイでした(巻真に亀裂が入っているため旋盤により別作の予定)。
ムーブメント製造会社は、初めて聞くTOUCHC&CO(スイス)という会社でしたが、見事な作り映えをしていました。
無名の時計メーカーでもこんなに素晴らしい機械が作れるなんて、昔のスイス業界の底力を知らされました。

高級アンティーク懐中時計には、ゼンマイ巻き上げ機構に特殊な装置を付けてあり、ゼンマイが一杯まで解けないようになされています。
駆動時間は短くなる欠点はありますが、ゼンマイの力が弱まるほとんど解けた状態では動かないために、テンプの短弧での時間の歩度の乱れはありません。
また、ゼンマイを一杯まで巻けないようにしてあるために、過度の力が加わってゼンマイが切れたり、テンプの振り当たりを未然に防いでおります。

薄く仕上げるために文字板止めの足が無く、一分の隙もなくムーブに密着してあり、其の工夫にビックリ致します。

●時計の小話 第102話(高級アンティーク腕時計の修理依頼)●

ベトナムのお馴染みのNさんから、1940年代に作られたK9金側ROLEX角形婦人用ドレス腕時計の修理依頼を受けました(昔はROLEXも婦人用の手巻きドレスウォッチを沢山作っておりました)。
また、Nさんの知人のIさんから、同じく1940年〜50年代のK10金側ティファニー角形婦人用ドレス腕時計の修理依頼を受けました。

ROLEXの方は18石でブレゲヒゲで、OH・調整のみで見事な精度が復活しました。

いつも思うのですが、アンティークROLEXは修理していて楽しいのですが、ティファニーの方は大変でした。
ヒゲゼンマイが他の時計の物を代用してあり、1日に4時間以上も遅れるという代物でした。
振動数が解らないために、ヒゲ合わせ作業は難解を極めました。
一度短く切ってしまえば元の木阿弥です。
実測しながら何回も少しずつ切りながらヒゲの長さを決定しました(厄介な歯車の歯数・カナ数で計算すれば振動数は解ることですが)。
ムーブメントはアメリカ・ベンラス社製でしたが、元々はETA社製でした(ベンラスがETAからムーブを仕入れて、少しアレンジしてティファニーに 納入したものと推測致します)。
50年前のROLEXとETA社製のムーブでは、技術力に歴然と大きな差があることが改めて再認識し解りました。

【修理雑感】
E社製ムーブメントCal、2893系(普及品Cal、2846と自動巻機構以外は殆ど同じ)を採用しているオメガ・シーマスター、IWCポルトフィーノ及びアクアタイマー、ユリスナルダン、ホイヤーの緩急針調整は本当に厄介です。
時計が遅れるために緩急針をプラスの方に動かせば、ヒゲ棒アガキが大きくなり、かえって大幅に遅れてしまうという私から思えば欠陥?ではないかと思うほどです。
緩急針を動かすたびにヒゲ棒アガキ調整をしなければならないという二重手間です。

クロノメーター規格に通っていても、ヒゲ棒両当たりアガキが大きく、姿勢差・短弧で歩度に影響を受けます。
一般的に高級機種になればヒゲ棒アガキは極めて少ないのですが、E社製ムーブメントCal、2893系にはこの常識があてはまらない様な気がします。
強い衝撃でヒゲ棒アガキが動いて変動するのも気になります。
ハック機能の秒針規正レバーがよく外れるのも気になる点です。
このムーブは改良すべき点がある気がいたしております。

時計の小話 第103話(オメガ女性用メカ式腕時計について)

オメガ社は今から30年〜35年程前には、幾多の女性用メカ式腕時計を発売いたしておりました。
紛れもなく当時のオメガ社はいろんな意味で世界第一級の時計メーカーだったでしょう。
多種多様なニーズに応えるために、いろんなデザインの女性用腕時計を作っていました(その中でもオメガ・婦人用コンステレーション自動巻腕時計は最高の地位を示しておりました)。

1937年、初めて女性用ムーブメントを開発して以来、40種以上に渡る女性用メカ式・ムーブを市場に送り続けておりました。
特に有名な女性用キャリバーを読者の皆様にご紹介したいと思います。
・キャリバー620 丸形(外径18mm厚さ2,5mm)19800振動 17石
・キャリバー690 極小長方形(外径18、8mm×7mm厚さ3,75mm)21600振動 17石
・キャリバー640 小型丸形(外径12,4mm厚さ2,85mm)19800振動 17石
・キャリバー730 小型角(外径16,4mm×9mm厚さ3,2mm)21600振動 17石
・キャリバー700 超薄型・丸形(外径20,8mm厚さ1,76mm)18000振動 17石

上記のムーブは全て手巻き式で小型の婦人用にもかかわらず、1日の誤差が殆ど20秒以内に入る精度を維持しておりました(当時の国産の高級婦人用腕時計の精度は日差±30〜40秒位でした)。

ムーブの地板には全て金メッキされていまして、現在の機械と比較しても何ら遜色無い美しいムーブメントでした(全ての面で昔の方が良かったかもしれませんが)。
特にCal、700は女性用としては世界最高峰の美しくて精度の出る手巻きムーブメントの一つと言って差し支えないかもしれません。
アンティーク市場でこのキャリバーの内蔵した女性用腕時計を見つけられるとしたら、迷わず買いでしょうか。
この読者の中にも女性の人が沢山おられますので、一度アンティーク・ショップで捜されたら如何でしょう。
きっと手に入れられたらその美しいムーブメントの魅力にはまってしまうと思います。

オメガの女性用の自動巻キャリバーでは、672、682の2機種がダントツで秀逸でしょう(機構メカニズムは男性用Cal561に非常に似ております。その小型化と言ってもイイかもしれません。IWCも当時はブレゲヒゲの見事な女性用自動巻腕時計(ムーブは丸型)を生産しておりました。IWCも当時の機械式は見事の一語に尽きる時計を生産していたのです。ロンジンもそうです)。

オメガ社はクロノメーターBO検定にも女性用が多数合格し、ROLEX社といつも数量で1位を争っておりました。
女性用に関してクロノメーター検定合格数は、1963年頃はROLEX社が200個弱、オメガ社が40個弱でしたが、1969年には立場が逆転しROLEXが5500個、オメガ社が20000個にまで一気に増えました。
いかにオメガ社が短期間に高精度の女性用腕時計を増産できたか。
その事から優秀な技術者が多く養成出来た証でもあるでしょうし、この婦人用OMEGAムーブの優秀さを物語るものです。
男性用と比較しても何ら見劣りすることのない精度を持っていました。

女性用クロノメーター合格品の平均日差は−3秒〜+12秒でした。
当時の女性の方でも、オメガの腕時計を所有する事は一つの夢であったに違い有りません。
今のROLEXのような圧倒的な実力と人気がありました。
ちなみにROLEX社はOMEGAに先立つこと1925年に婦人用クロノメーター腕時計を生産開始しております(ROLEXの社史を紐解くと何でも1番が多いのにはビックリします)。
前回お話ししましたNさん御依頼のROLEX婦人用腕時計(約60年前)も、いとも簡単に高精度が復活しました。

時計の小話 第104話 (ROLEX社の栄光の足跡)

ロレックスは有名スイス時計メーカーの中では後発メーカーですが、他社を圧倒する輝かしい足跡を残しております。
そのごく一部を皆様に紹介したいと思います。

・1905年 レバー脱進機を持つ腕時計専用のムーブを世界最初に開発。

・1910年 腕時計に初めてクロノメーター公式測定証明書を獲得。

・1914年 英国キュー天文台より世界最初の小型腕時計に与えられるA級証明書を獲得。

・1925年 婦人用ROLEXクロノメーター第1号が生産される。

・1926年 世界最初の完全防水時計ケース【オイスター】を完成し特許を得る。

・1931年 自動巻パーペチュアルを発明する。

・1945年 世界で初めて防水自動巻カレンダー付き腕時計を発売。それがROLEXの代名詞デイトジャストです。

・1953年 ジョン・ハント卿に率いられてエベレスト登頂に成功した探検隊は、オイスター・パーペチュアルを公式装備に認定する。

・1954年 婦人用の完全防水自動巻クロノメーターを発売し、スイス時計計測協会の検定つきでした。

・1956年 世界で初めて防水・自動巻・日付曜日付きクロノメーターを市場に出す。これがRELEXデイデイトです。

・1960年 バチスカーフ・トリエステ号潜水艦の外側に取り付けられて、水深10908m迄潜ったROLEXオイスターは、引き上げられてからも 完全に動いており、その防水性能に世界中が驚嘆しました

・1972年 ROLEXはこれまでに150万個を遙かに越えるクロノメーター腕時計を製造し、この数字は過去50年間の全スイス腕時計の製造量の過半数を占めています。スイス時計のクロノメーターと言えばロレックスと言われるほど有名になりました。

約30年前にROLEX社は世界中に有名になり、確固たる地位を獲得しております。
私がこの業界に入った頃(約30年前)、エクスプローラーは126000円、 サブマリーナーデイトは166000円、GMTマスターは164000円、 エアキングが95000円、SSのデイトジャストが169000円、コンビが293000円、18金無垢デイデイトが748000円で売られておりました。
非常に安かった錯覚を覚えますが、大卒初任給が5万円、高卒初任給3万円の時代ですから、やっぱり高かったです。
30年前のエクスプローラーがアンティーク市場で40万円以上で売られているのにはビックリします。
誰がこの爆発的な高騰を予測できえたでしょうか。
デイトナに至ってはもう言葉になりませんものね。

●時計の小話 第105話(セイコー・ムーブメント56系について)●

1968年に発売された、セイコーロードマチックに搭載された56系のムーブメントは、61系のGSのムーブ・45系(手巻き)のKS・GSのムーブと共に精工舎が製作してきた、いろいろなムーブの中でも代表する機械の一つでしょう。
自動巻デイデイトにもかかわらず薄型で、部品数が極めて少なくてコンパクトに設計されていて、分解・組立・調整しやすい機械です。
6振動にもかかわらず非常に安定した精度を維持しておりました。
ガンギ歯数を増やすことにより、8振動の高振動化してキングセイコー(Cal5626)、グランドセイコー(Cal5646)が派生的に生まれてきました。
普及版のロードマチックでも、腕のいい時計修理職人が時間をかけて微調整すれば、KS・GSに匹敵する精度がいともたやすく出ました。

私が今まで修理してきた30年間で、どの時計のムーブよりも一番多く修理してきたに違い有りません。

ゼニス・エルプリメロのムーブが復活したように、精工舎のムーブで45系(手巻き)・56系(自動巻)・61系(自動巻)のムーブメントの復活を熱望してやみません(マイクロフィルムで設計図が残っているのに違いないのですから、再生産は簡単でしょうか?)。
ハッキリ言って現在クレドールに搭載されているキャリバー4S系よりも上を行くものと、私見ですが思っております。

特に45系(手巻き)・56系のムーブの復活を渇望いたしています。
45系(手巻き)は美しさも格別ですが、精度はメカ式ではセイコー史上過去最高の日差−2〜+2秒というとてつもない精度を誇っておりました(携帯して実際は1秒も狂いはしなかったのです)。
このムーブはセイコーの歴史上、最高峰の機械であったと断言しても差し支えありません。

時計の小話 第106話(女性用グランドセイコーについて)

1968年に第二精工舎より製造発売された、女性用グランドセイコーについてお話しいたします。

この機械は手巻きのCal、1964Aで19,6×12,9mmという、やや小型サイズにもかかわらず、世界初の婦人用高振動(10振動)のクロノメーターでした。
精工舎がただ1回だけ作った女性用のGSです(そのころROLEX社もWGやYG側の婦人用手巻き腕時計を沢山作っておりましたが、価格が当時で15万円前後いたしました。とても一般の方が容易に買える金額ではありませんでした。殆どが手巻きの小型の2針のムーブでした)。

精度に固執する女性時計ファンにはもの凄い人気がありましたが、需要の絶対数が少ないために、この女性用GSは市場から割と早く消えてゆきました(女性の方は中の機械のことよりデザインを優先しているために、やや小型と言えども他より大きいために多様なデザインが出来得ませんでした)。

精工舎がただ一つだけ生産した女性用GSとして、燦然として時計の歴史に名を留めております。
私がこの業界に身を置いた30年前はメカ式腕時計の熟覧期で、本当に素晴らしい機械がいっぱいありました。
懐古調趣味なのかもしれませんが、ROLEX・JL・AP・PP・VC等を除いたら昔の機械の方がある一面で優れていたのではないでしょうか。

●時計の小話 第107話(スイス時計ジュベニアについて)●

昭和30年代〜40年代には、どの時計店にもジュベニア・エニカ・シーマいう当時のスイス時計御三家が沢山置いてあったのです。
その中でもジュベニアが群を抜いてデザインも良く、薄型のイイ機械が入っておりました。
価格もリーズナブルで国産より少し高かった程度でした(ラドー・テクノス・ティソット等の台頭により、日本時計市場から悲しいかな、消えゆく運命でした)。

ジュベニア時計会社は、1860年にスイス・ラショードフォンにて創業致しました。
ROLEXよりも古く、ゆうに140年の歴史がある由緒ある時計会社です。

最盛期には500にものぼるデザインの時計を製産しておりましたが、年間製産本数は8万本前後という少数精鋭でした。
どれもが魅力に富んだイイ腕時計でした。

最初は手頃な懐中時計を専門に作っておりましたが、スリムスタイルを特徴として、シンプルで美しい腕時計を作り始めました。
特に1,71mmという極薄のムーブメントを開発してゴールド・ウォッチを売り出したり、アメリカの金貨を採用したコイン・ウォッチは、コルム時計と共に世界中から絶賛を浴びました。

このジュベニア時計が日本に初めて輸入されたのは以外と古く、何と1904年明治37年のことです。
それ以来、玄人好みの時計として日本人に長く愛用されてきました。
中高年の方には非常に懐かしい響きを持った時計だと思います。

最近になって、新型がちょくちょく日本でも見られるようになりましたが 、デザインはやっぱり40年前の物とよく似ており、一見してジュベニアと解るものです。

●時計の小話 第108話(ETA社クロノグラフ・ムーブ7750について)●

ETA社製クロノグラフ・ムーブ7750は、スイス製腕時計のクロノグラフのおそらく90%以上に使われているとても有名な機械です。

オメガスピードマスター(Cal、1155)、ブライトリング、タグホイヤー、オリス、モーリスラクロア、クロノスイス、エドックス、ゾディアック等のクロノに採用されていて、他にも枚挙に暇がないほど沢山あります。

この機械の基になったムーブメントは、バルジュー7733(ブライトリングに採用)、7734で、ETA社に吸収されて生まれてきたものです。
カム式と言えどもこの7750はとても分解・組立・調整しやすくて、それでいて価格は安いのでいろんな時計メーカーに採用された原因でしょうか。
リーズナブルな価格でムーブメント一式が購入できますので、この機械にケース・文字板・バンド・針を付けて、日本で20万円〜30万円で売られているのですから、やり方によっては非常にうま味のある産業と言えると思います。

Cal・7750(自動巻カレンダー厚さ7,90mm25石・時・分・クロノグラフ秒針・30分12時間の積算計・カレンダー早送り装置付き)から7751 (7750にポインターデイト・ムーンフェイズ・スモールセコンド・12時の位置に曜日・月の表示24時計)、7757、7758、7760(手巻デイデイト)、7765(手巻きカレンダー)、7768と5種類のムーブが派生的に誕生致しました。
基本的には殆ど同じです。
ベースの7750をマスターすれば、あとのCalは簡単な?時計修理と言えると思います。

ROLEXデイトナ・ZENITHエルプリメロと比較して大量生産しやすくお買い求め安い価格ですので、こんなにまで普及したものと思います。
クロノの入門品としてクロノファンにお勧めのムーブです。

●時計の小話 第109話(スイス時計ゾディアック について)●

スイス時計ゾディアックは、10年程前にはクロック専門メーカー・リズム時計が日本総代理店で、日本では低価格の為に、そこそこ人気のある時計でした。

10年前にはクォーツ腕時計が主体で、クロノグラフはETA社Cal、7750を搭載して市場に出していました。
価格帯はクォーツ腕時計が5〜8万円台が主流で、クロノは20万円しました(クロノは結構高かったです)。

メカ式に対して伝統のある時計会社がクォーツ(精度)に固執して、そればかり製産していたので、市場から消えてゆくのではないかと危惧していましたが、 案の定、何時の間にやら日本から消えてゆきました(日本のセイコー・シチズンに対抗してクォーツばかりを競合製産していたスイス時計会社は存亡の危機に陥りました)。

今では日本総代理店はなくなり、殆ど新作は入って来ないのが現状です。

ゾディアック は1882年にアリスト・カラムによってスイスのル・ロックルにて創業した由緒ある時計会社です。
当初はカラームと言うブランドで売り出されておりました。

ROLEX社より歴史があるために、いろんな金字塔をうち立てております。
ゾディアック 社の輝かしい年譜を書いてみます。
・1924年 超薄型ポケットウォッチを発売

・1930年 スイス発のオートマチックウォッチを発売

・1932年 新型アンチ・ショック・システムを考案

・1953年 ダイバーズウォッチSeaWolfを発売

・1965年 Montres et Bijoux Exhibitionの賞を獲得

・1967年 モントリオール万博において一等賞を獲得

・1968年 スイス初の電子腕時計DYNOTRONの発売

・1968年 36000振動のハイビート・オートマチック腕時計の発売

・1978年 世界で最もスリムなクォーツ腕時計の発売

ゾディアック 腕時計と言えば、夜光目盛りとダイビング針のスポーツ文字板を装備しているのが特に有名でしょう。
スポーツ系に尖鋭化していった時計会社と言えます。

一時は経営困難からゼニスグループに入りましたが、今ではアメリカの会社に買収されたと聞き及んでおります。
ある時計雑誌にゾディアック 特集をしていましたが、アンティークショップで不当に価格が低く抑えられているにはビックリしました(ブランド・イメージが弱くて人気がないのかなー)。
もっと高い評価を受けてもイイ時計会社です。

●時計の小話 第110話(ロンジンのムーブメントについて)●

ロンジンは1970年代までは自前の素晴らしい機械式の腕時計を作っておりました(その意味ではオメガ・IWCと同じです)。
クォーツの出現により機械式時計の未来を暗黒と予想した時のロンジンの経営者達は、自社の機械式ムーブメントの製造機器を他社(レマニア社・ETA社)に全て売り払ってしまったのです(今から思えば何という愚挙に出たかと思わざるを得ません。現在の機械式が完全に復活し隆盛する事を読み誤ったのです)。
そしてスウォッチ・グループに入り、ETA社製キャリバーを搭載した水晶腕時計ばかりを売っておりました。
世界中であれほど人気のあったロンジンも人気が薄れ、価格が市場で暴落し扱う時計店も減っていきました。

そのロンジンがかって『コンクェスト』に搭載した機械式の名機Cal、L990(28800振動・直径26mm・厚さ2,95mm)を蘇えらせることを聞き、嬉しく思っております。
ロンジンにはかって下記のような素晴らしいメカ式ムーブが存在しました。
・Cal、501 503
このムーブはADMIRALに搭載された機械で、回転錘式自動巻機構・丸形ムーブ11、5型・17石・19800振動です。
安価で高精度の割には部品数が少なくて調整しやすい優れ物でした。
直径25,6mm・厚さ5,2mm 動力持続時間45時間

・Cal、430 431 433
このムーブはかの有名なULTRA−CHRONに搭載された機械です。
メカ式では想像を絶する精度を保有しておりました。
丸形ムーブ11、5型・17石・36000振動のハイビートでした。
直径25,6mm・厚さ4,3mm 動力持続時間42時間。
ロンジンのムーブはコンパクトで有りながら高精度の象徴でした。
ある一面ではセイコー舎躍進の影の功労者と言えるかも知れません。
セイコー舎とロンジンは過去の於いて極めて親密な関係でした。

・Cal、470 472
このムーブは婦人用に開発された自動巻です。
丸形ムーブで32石入り直径15,3mm・厚さ4,6mm  動力持続時間46時間
現行のROLEX・Cal2135と比較しても何ら遜色のない優秀なムーブメントでした。

25年ほど前にはロンジンは日本でもの凄く人気があり、かなり売れておりました(生産が販売量に追いつかなかった程です)。

スイスフラン及び人件費等の関係か解りませんが、東京台東区浅草橋にY川時計工業と言う会社がロンジンの組立協力工場として活躍しておりました。
私が28歳の頃、そこの社長から組み立て工場の責任者として入社してもらえないかという依頼がありましたが、若輩者で人を動かす人望も持っていないので鄭重にお断りした事が昨日のことのように思い出されます。

人生には大きな岐路が必ずあります。
私にとって若いときにアメリカ・ベンラス社に行っていたら?
Y川時計工業に行っていたら?
どんな人生を歩んでいたか。 想像もでき得ません。
私は2回の大きなチャンスを掴み得ませんでした。
でも厳しいですが小さいながらも一軒の店を経営している今に満足しております。
私の父は人生には3回大きなチャンスがあると口癖のように申しておりました。
その3回のチャンスをモノにした人が大成する人だと言っておりました。
読者の皆様も平等に訪れる3回の大きなチャンスを掴み取って欲しいと思います。

●時計の小話 第111話(セイコークォーツ35SQについて)●

読者の皆さんNHK『プロジェクトX』見られましたか?
45分の番組の中に全て織り込むのはちょっと無理でしたね(3回シリーズぐらいにはして欲しかったですね)。
もっともっと知って貰いたかった事がいっぱいありました。
補足の意味を兼ねて私が知っているかぎりのことを書いてみたいと思います(実際には書ききれないほどの量なのですが)。

昭和44年に発売されたセイコークォーツ35SQ(定価45万円)にはIC集積回路が使われていない為に、トランジスター80個、コンデンサー50個、そして超微細なハンダ付け箇所が128個あったのです。
それを外径30mm厚さ5,3mmの中に詰め込むのは、至難のワザと言っても過言ではないでしょう。

諏訪精工舎の若手技術陣、藤田欣司氏、栗田正弘氏、相沢進氏、山村勝美氏らは、会社内に畳敷きの部屋を作ってもらい何十日間も泊まりがけで、それこそ命をはって設計、研究、開発に没頭したのです。

その頃、スイスCEHがあっちこっちからパーツを集めて作ったクォーツと違い、セイコーのクォーツは完全自社生産のモノだったのです。
エレクトロニクス技師が育っていないにもかかわらず、社運を賭けてGOサインを出した山崎久夫諏訪セイコー社長・服部正次服部時計店社長の先見の明には頭が下がる思いです。

子に遅れをとった第二精工舎は、諏訪精工舎より1年遅れの昭和45年に独自のクォーツ腕時計を開発したのです。
その中心にいた人物が有名な井上三郎氏、久保田浩司氏だったのです。
服部正次服部時計店社長の叱咤激励・薫陶を受けた二人は、諏訪精工に負けないクォーツを次から次へと出したのです。
それがセイコークォーツ08であり、セイコークォーツ43だったのです。

余談ですが藤田欣司氏(テレビ出演者)と言えば、昭和42年のニューシャテル天文台コンクールに水晶懐中時計15個、機械式時計15個を持ってスイスに行かれた人です。
自分達が作った水晶懐中時計と共に、中山きよ子氏・稲垣篤一氏・小池健一氏が調整した空前絶後の超高精度機械時計を持って行かれた人でもあるのです。
その時のセイコーのニューシャテル天文台コンクールの成績が、水晶懐中時計分野では1位〜5位まで独占、機械式時計分野では4、5、7、8位にズラリと入っていたのです。
その結果、長い歴史を誇ったニューシャテル天文台コンクールがうち切られてしまったのです。

●時計の小話 第112話(ベトナム旅行レポート)●

9月9日夜、全日空ゲートタワーホテル大阪に1泊して、明くる10日朝、ベトナム航空にて一路ホーチミン市に向かいました。

10日午後、無事にホーチミン市に到着して、ルネッサンス・リバーサイドホテルにてNさんとお会いし、ご一緒にベトナム料理を食べました。
HPを通じて知り合ったNさんとは初めてお会いするので、どんな方であろうかと想像をしておりましたが、体躯の立派な背の高い人でした。
いろいろと話が弾み、楽しい食事時間を過ごさしていただきました。

11日はベトナム戦争で有名なクチトンネル観光をしてきました。
総延長200kmに及ぶくねったトンネルにはビックリしました。
同行者(男子2名・女子2名)4名の中で、私だけトンネルの中に入ってきました。
ベトコンの人々の忍耐力には驚嘆させられます。
強大国アメリカが負けたのも頷けます。

いよいよ12日は本命のアンティーク腕時計探しです。
Nさんの馴染みのアンティーク・ウォツチ・ショップ4店舗を見て回りました。
目星をつけて7〜8万円位のアンティーク腕時計10本ぐらい購入する計画でした。
メーカー名(ロレックス・チュードル・オメガ・IWC・JL・GP等)・ケース・文字板が 気に入っても、ムーブメントの状態が気に入らなければ買わない腹ずもりでした。

めぼしい物を見つけては、店の方に無理を言って中の機械を見せて貰いましたが、気に入った納得がいく物がなかなか見つからず、本当に弱りました。
機械に対して目の肥えた私ら職人は、アンティーク・ウォツチはなかなか買えないものとよくわかりました。
ちょっとでも機械に錆があったり、ヒゲゼンマイが狂ってあったり、腕の悪い職人がいじくり回してあるものには食指が動きませんでした。
アンティーク・ウォツチは結局、中の機械の状態がよくわからないアマチュアの方にしか買えないのではないかと思いました。
それほどまでにどのアンティーク・ウォツチにもプロから見て妥協できない欠陥が多くありました(そこがアンティーク・ウォツチの魅力だと言ってしまえばそれまでですが)。

同行者の方からアドバイスを求められましたが、ハッキリこれはお薦めですと言える物が1個もありませんでした。
折角ここまで来たのですから1本ぐらいは買っていかないと読者の方も楽しみにしておられると思い、妥協出来る品2個を買ってきました。

ROLEX Ref1601(20年前定価238000円の品・メタルバンド無し)を 900$(約11万円)、ジラールペルゴーRef90530.011(現行品、定価28万円の品)を 800$(約10万円)です(この2本は後日私がOHして読者の方にお売りしたいと思っております)。

一緒に旅をした3名の方は残念ながら1本も買われませんでした。
お一人、コルムの時計が気に入り買われる予定でしたが、バンドの長さがあいにく合いませんでした。
アジアのどの国でもそうですがコピー時計商品が氾濫していました。

13日はメコンデルタクルーズ観光してきました。
その中州の島で昼食を取りましたが、そこで著名なジャーナリスト桜井よし子さんにお会いしました。
テレビで拝見するよりずーと奇麗な女性でした(私は桜井よし子女史を大変尊敬しております)。

●時計の小話 第113話(ベトナム旅行レポート 2)●

ホーチミン市の市街地はとてもオートバイが多いです(3人乗り、4人乗りは当たり前です)。
それこそ蝗の群がやって来るような圧倒さです。
ヘルメットをかぶらずハンカチでマスクをして、老若男女がスピードをだして縦横無尽に駆け回る姿は躍動溢れるものです(大勢の月光仮面が出現したようでした)。

大都市にもかかわらず交差点に信号機は殆どありません(信じられない光景です)。
後ろを見ないで割り込みもへっちゃらで、さぞかし事故が多いだろうと推測します。

ホンダのオートバイが20万円で中国製が7万円します。
何故か解りませんが、バックミラーがオートバイに付いていません。
1ヶ月の給料が15000円くらいですから日本では軽自動車を乗る感覚でしょうか(将来、経済発展して自動車が普及したら駐車場の確保に大変な目に遭うと思います)。
路線バスが殆どないためにこれほどまでにオートバイが普及したのでしょう。
混雑がひどいためにクラクションがどこでも鳴りっぱなしで、その喧噪さは行ってきた人でないと解らない位です。

道路沿いの商店街や露天商は活気があり、人がウヨウヨしています。
短い停電が日に何回とありました。
急激な経済発展で電気の供給が逼迫しているのでしょう。

ガソリンが1リットル50円もします。
地元の人にとって大変な負担です。

時計屋さんはたくさん見受けられましたが、眼鏡屋さんは殆ど見かけませんでした。
そう言えばめがねをかけている人が少なかったです(ベトナムの人は本当に美人・ハンサムボーイが多いのにはビックリしました)。

メインストリートのドンコイ通りには、オメガ・ラドー・エドックス(懐かしいメーカーです)・ロンジンの専門店がありましたが、決して価格は安くはありませんでした。

ホテルから見たサイゴン川の夜景はとてもキレイでした。
フェリー、観光船の行き交う風景は旅情をかき立てました。

大統領府・中央郵便局を見学してきましたが、その豪華さには目を見張るものがありました。

どこを歩いても日本女性の二人連れの旅が多かったようです。
治安は悪くはないと思いますが、日本女性の一人旅の人に出逢うと心配ではいられませんでした。
行き帰りの飛行機の中でも殆どがうら若き日本女性でした(本当に日本は不景気かと疑いたくなるほどです。しかし青春時代に見聞を広めることは大いに賛成です)。

12日の日にNさんのマンションを訪ねて、彼が所有しているアンティーク・ウォッチ・コレクションを見せて貰いました。
何と約30個以上ありました。
日本の実家にも沢山置いておられるとのこと再度吃驚です。
その中で圧巻は重鎮式ウエストミンスターホールクロック(日本に持って帰るときどうされるのかな?)、デテント脱進機・提灯ヒゲのマリンクロノメーターでした。
マリンクロノメーターのほうは今では殆ど見受けられない貴重品です。
15万円前後で買われた代物です。
30年前でも35万円以上はした高級な時計です。
日差1秒以内の精度です。
これだけは私も絶対欲しいなと思った時計です。

期待していったのですがベトナム料理にはちょっと嗜好があいませんでした。
どの料理にも入っている香草のにおいが私にはあいませんでした。
同伴の一人の男性はうまいうまいと言っておられましたが。

●時計の小話 第114話(スイス時計ユニバーサルについて)●

日本で極薄型の腕時計といえば、ユニバーサルが非常に人気がありました。
過去に於いては(株)村木時計が輸入代理店で、大きく育ててきました。
今はコサ・リーベルマンが輸入代理店と聞き及んでおります。

私はユニバーサルが大変好きで、2本を愛用しておりました(スイスでは時計の仕立屋と言うあだ名で著名です)。

30年前にホワイト・シャドーやゴールデンシャトーが薄型自動巻として一世を風靡しました。
200m完全防水のユニバーサル・サブ(当時の価格で77000円)は、過酷な条件でも ビクともしない時計として有名になりました。
特にCal、2−66(自動巻) Cal、1−42(厚さ2,45mm手巻き) Cal、381(クロノグラフ)は見事な出来映えです。

大多数の自動巻がムーブの中心部にあるのと違って、ユニバーサルでは輪列部とローター部が完璧に別れておりました。
その為に大変薄く仕上がりました。
当時の価格で手巻きSSで40000円、自動巻SSで7万円位する高級機種でした。

ユニバーサル時計は精度が優秀なために、スカンジナビア航空会社にオフィシャルとして採用され、ポールルーター(北極圏飛行者)のあだ名で愛称されました。

電子時計の分野でも先進的で、ブローバといち早く技術提携をして、昭和46年にユニバーサル・ソニック(音叉時計・精度99,998)SSで135000円を発売しました。

最近は影が薄くなりましたが、日本でもっと売れてもイイ時計ではないでしょうか?

福井の読者の方から、月・曜日・日付・ムーンフェイス機能付きのユニバーサル・クォーツの電池交換を預かりましたが、やはりETA社製Cal、255481が入っておりました。
かっての名門スイス時計メーカーが、自社ムーブではなくETA社ムーブばかりを 採用していることに私は少し疑問に思います。
個性・特徴が失われてゆくような感じです。

●時計の小話 第115話(スイス時計メーカー豆辞典)●

・世界最初のリューズ巻き上げ時計・・・1842年 パティック・フィリップ(それまでは鍵によって巻いていました)

・世界最初の秒針を持つ時計・・・1846年 パティック・フィリップ

・世界最初の光電子時計・・・1950年 パティック・フィリップ

・世界最初の原子力時計・・・1954年 パティック・フィリップ

・世界最初の自動巻時計・・・1931年 ROLEX

・世界最初の完全防水時計・・・1926年 ROLEX オイスターケース

・世界最初のクロノメーター検定合格時計・・・1910年 ROLEX

・世界最初の耐震装置付き時計・・・1934年 ゾディアック

・世界最初のクォーツマリンクロノメーター時計・・・OMEGA

・世界最初の音叉腕時計・・・1954年 ブローバ・アキュトロン

・世界最初のクォーツポケットウォッチ時計・・・1966年 ロンジン

・世界最初のクォーツ腕時計・・・1967年 スイス時計センターCEH製

・世界最初のプラスチック腕時計・・・ティッソ

・世界最初の温度差駆動時計・・・ジャガールクルト製置き時計

・世界No1の極薄クォーツ時計・・・1,64mmのジャガールクルト製

・世界No1の極薄手巻き腕時計・・・1,64mmのジャガールクルト製(製品はオーディマピゲ、バセロン等に使用)

・世界No1の極薄自動巻腕時計・・・2,30mmのピアジェ

・世界No1の極薄懐中時計・・・1,45mmのジャガールクルト製(製品はバセロンコンスタンチン等に使用)

・世界No1の複雑クロノグラフ時計・・・オーディマ・ピゲのグランドコンプリケーション

・世界No1の複雑時計・・・パティック・フィリップ

・世界No1の防水時計・・・ROLEX 海底10908mの深度に耐えた

・世界No1の極小時計・・・ジャガールクルト製(14mm×4,8mm 厚さ3,4mm 重さ1g)

・世界No1の極小クォーツ時計・・・・ETA社製(9,9mmの丸型 厚さ2,8mm)

・世界No1の耐磁時計・・・・IWCのインジュニア腕時計

このように輝かしい記録を列挙すれば、いかにROLEX・ジャガールクルト・オーディマピゲ・パティック・フィリップがスイス時計の中で群を抜いて光芒を放っているか理解できると思います。
このようなスイス時計を所有する事は誇りでもあり嬉しくもあるに違いないでしょう。
孫の代まで大切に伝承されるべき時計と言えると思います。

●時計の小話 第116話(スイス時計ティソについて)●

ティソは以前は日本ではチソットと呼んでいました(ゼニスをゼニットと呼んだように)。
30〜40年程前には、オメガの姉妹品として(株)日本シイベルが日本輸入総代理店でした(ROLEXとチュードルの関係に少し似ているかもしれません)。

オメガが高価で買えなかった人が、スイス時計の入門品として購入して若人に人気がありました(当時の価格は2〜3万円が中心でした。国産中級品のセイコー・シチズンが 7〜8000円の時代)。
ラドー・テクノス・ウォルサムのように、けっこう多くの人が愛用した時計であるに違い有りません。

家族経営から離れ、現在はスウォッチ・グループの一員として活動しております。

以外に歴史は古く、1853年にチャールズ・フェリシアン・チソットとチャールズ・エミル・チソットの親子が、ジュラ渓谷の小さな村ルロックルに創業しました。
アメリカ、ロシアに販路を開拓して、中堅のメーカーとして地位を確立しました。
一時期には従業員の数が600人まで増え、一時代を謳歌しました。

技術の貢献では、1930年には世界に先駆けて超耐磁気時計を生産したり、世界で初めて1971年に透明のプラスチック時計を作ったりしました。
1984年には名誉あるオリンピック・オフィシャル・ウォッチになるなど、精度・品質の信頼を勝ち得ていました。
当初より、リーズナブルな価格にするために、エボーシュメーカーから各種部品を調達して、自社工場で組み立てるというシステムを導入していました(全く無駄を廃した合理的なアメリカ・スタイルの経営手法かと思います)。

クォーツが登場した1970年代、スイス高級時計メーカーが苦戦して廃業に追いやられたり、業務を縮小したりした時でも、いち早くクォーツ化に道を開き、現在でも逞しく生き延びて きました。
メカ式時計が脚光をあびている現在でもクォーツ式がメインで、面白くて楽しい時計作りに邁進しております(内蔵する機械は殆どETA社製です)。
画期的なクォーツ式ナビゲーター(48000円)や、PRS200クロノダイバー(53000円・クォーツ式)、トノー型のレプリカ1925(手巻き98000円)等を今、発売しております。

過去に於いてチソットのセールスマンから面白い話を聞きました。
イタリア人はファッションセンスで時計を選び、スカンジナビア人(ノルウェー・スウェーデン・フィンランド)は価格で購入時計を決定し、フランス人は品質で選び、日本人はブランドで選ぶと・・・そうスイス時計業界人は思っていると(フランスでティソは非常に人気がありました。おそらく手前味噌なのかもしれませんが)。
30年前でも日本人はブランド志向であることを当時のスイス人は言い得ていました。

●時計の小話 第117話(デジタル表示式自動巻腕時計について)●

デジタル表示で機械式といえば、スイス時計HOGA(ホーガ)を浮かべる人が多いに違い有りません。
それほどまでにホーガのデジタル表示式自動巻腕時計は有名でした(12時の所に3角の覗き穴があり、そこから数字を読み込んで時刻を知るシステムでした)。

でも一番多くのデジタル表示式自動巻腕時計を生産してきたのは、エボーシュメーカーのア・シールド(A.Schild)でしょう。
ア・シールド(A.Schild)の開発したCal、ASー2072は組立調整しやすく、簡単な構造の機械で安いために、多くの時計メーカーに供給され続けました。
17石入りで3姿勢の誤差が0〜+30秒以内に絞り込まれていて、価格の割には精度はイイ方でした。
3枚のデジタル円盤の表示板があり、外側が1〜12までの時表示、中側が0〜5分刻みの分表示、内側が0〜5秒刻みの秒表示になっていました。
普通の指針表示の時計ではなく、奇異を衒う個性的な人にはなかなか人気機種でした。

現在、ア・シールド社はETA社に吸収されています。

国産では、シチズンが表向きはデジタル表示式自動巻腕時計のように見える腕時計を作りましたが、中の機械はクォーツ式であった為に余り人気はなく、すぐ市場から消えてゆきました。
表示がデジタルの数字ではなく、ただの●でその動く位置の場所により時刻を知るというものでしたので、時刻が読みとりにくいという欠点がありました。

●時計の小話 第118話(タイメックス時計について)●

今から35年程前に、(株)マルマン(ライター・ゴルフクラブのメーカー)が輸入代理店になり、アメリカ最大の時計メーカータイメックスが日本に上陸しました。
廉価版時計メーカーとしては世界最大級の規模の会社なので、日本の時計メーカーは戦々恐々の状態でした。
当時では画期的な価格で2〜9000円の低価格であり、それも1年以上動くという接点式電気腕時計とピンレバー腕時計の二本立てでした(構造は部品数を徹底的に減らし単純化された機械でした。簡単に組立が出来ました。スイス高級時計と比較したらオモチャ?のような機械でした。ちょっと失礼かな)。

マルマンの意気込みももの凄く、全国各地で技術講習会を開きました。
時計店の親爺さんの関心も高く、講習会は何処でも満員だったということです。

時計といえば高級品というイメージが大きい日本人にとって、大変な価格のインパクトでした。
しかし話題が大きければ大きいほど、しぼむのも早く、アッと言う間に市場から消えてゆきました。

その原因は時間の誤差に対する認識が、日本人とアメリカ人とでは大きな差があったのです。
タイメックスの、日差が1〜2分もでる誤差に、几帳面で時間にうるさい日本人は ついていけなかったのです(アメリカ人は時間に対して寛容だったのでしょうか?その頃の国鉄が秒刻みで動くのに対して、アメリカの鉄道は5分〜10分の遅れは当たり前の時代でした)。
それと故障がいろいろ多かったのも致命的でした。

スイスのいろんなエボーシュメーカーもタイメックスに負けじと色気をだして、超低価格のピンレバーウォッチを日本に売り出すためになぐりこみをかけましたが、こちらも誤差が1日2〜3分も出るために、全然受け入れられませんでした(価格は1〜2000円でした)。

タイメックスの登場に慌てたセイコー舎は、7石入りのクラブツースレバー脱進機のトモニー・ブランドの廉価腕時計を売り出しました。
こちらはそこそこ時間が正確なため市場に受けいられ、長い間愛されました(精度、日差1分以内)。

現在のタイメックス社は魅力のある腕時計を一杯生産しておりますが、ポリシーは一緒でやっぱり良心的な低価格です。
現在はコサリーベルマンが代理店で、若人に大変な人気があります。
勿論クォーツ一辺倒で、昔と違い時間は極めて正確です(組み込まれた電池は1,5ボルトの普通の物と違い、3ボルトの特殊なものが多いです)。

時計の小話 第119話(ROLEXの唯一の弱点)

世界第一級の堅牢さを誇るROLEXのケースにも少しは弱点があります。

完全防水のオイスターケースにも泣き所が存在するのです。
防水機能が万全なはずの、ロック式リューズネジの箇所です。
時折、ケースとのつなぎめのチューブのネジがゆるんでしまい、ケースから外れるという故障です。

原因は、汗をよくかく夏の時期に起こりやすいです(9月から10月にかけて修理依頼がけっこう多いです)。
はずれた状態ですと、水はいっぺんにケースの中に入り込みます。
そうなると一刻も早くOHしないと全体にサビがまわり、ダメになってしまう事があります。

ムーブメントが正確なために、1ヶ月近くも針合わせのリューズ操作をしないと、ネジで噛み合うリューズとチューブが夏などの時期に埃・チリ・汗等でサビが生じ、 ひっついて動かなくなってしまうのです。
引っ着いたまま、力一杯リューズを回すと、リューズとチューブが着いたまま廻り、ケースに埋め込んであるチューブのネジがゆるんでしまうのです。
もうこうなれば防水機能は一切ききません。

その故障を防ぐ為には、時折ユーザーの方の自己点検が必要です。
それは技術のないお客様でも簡単に出来ますので、たまにはして欲しい作業です。

リューズをゆるめゼンマイが巻ける状態の位置にリューズを置き、乾燥した歯ブラシや爪楊枝で、チューブのネジ山の部分のゴミ・サビ・チリ・汚れを取り除く事です。
最後に時計専用工具ブロアブラシで仕上げれば完璧です(パッキングがあっても油断大敵です。 リューズ下向きの位置でしますと、ホコリ・チリ等が機械の内部には入り込みません)。

理想的なことは定期的にROLEX・チューブ専用の白色シリコン油を塗布すれば最高です(チューブとリューズが引っ着くのを防ぎ、リューズ回しを滑らかにします)。
技術の確かな店には白色シリコン油ありますので、リューズ作動が固くて懸念のある方は塗って貰って下さい(他店でお買い上げのROLEXでも良心的な店なら無料でしてくれると思います)。
防水機能の肝心要のチューブ交換手数料は5000円かかります。

●時計の小話 第120話(アンティーク・ウォッチの上手な買い方)●

アンティーク・ウォッチの上手な買い方は、以前時計の小話で書きましたが、まだ理解されていない方がおられますので、重要な事を述べてみます。
最近買われたアンティーク・ウォッチの修理依頼が舞い込みますが、どうしてこんなに状態の悪い品を買われたのか疑問に思うときが頻繁にあります。
最低限チェックして欲しい事がありますので、よく読んで頂きたいと思います。

・購入する予定のアンティーク・ウォッチが決まれば、店の人に頼んで必ず機械を見せて貰いましょう(ホコリが入るからってと言って快く見せてくれない店では買わない方がイイと思います)

・高級アンティーク・ウォッチを買う人は、あらかじめキズミ位買って、準備して店へ行きましょう(キズミは時計材料店で500円〜800円位で買えます)

・平姿勢(文字板上・文字板下の2通り)でゼンマイを半巻きして、テンプの振り角の様子を見て下さい。
振り角(180度以上必要)がほぼ同じならどうもないのですが、一方がガタッと落ちるようでしたら、一方のホゾの曲がり、ホゾの摩耗・ホゾ折れが考えられます。この場合、いかに外観が良くても天真交換等の修理が必要になり、高額修理になります。

・また、リューズを下にして縦姿勢でもテンプの動きを十分見て下さい。
平姿勢と同じような振り角があれば問題ないと思いますが、極端に振り角が落ちたら買わない方が賢明です。

・機械時計ではサビが一番の大敵ですから、地板・ネジ・ケース内側・歯車のカナ等が赤錆していないか、キズミでよく見てみましょう。
後々後悔しないためにも充分な配慮が必要です(売買成立してしまえば後は自己責任ですから)

最近、佐賀県の読者の方からMoeris腕時計17石・手巻き腕時計の修理依頼を受けましたが、数十年前のアンティークにもかかわらず、ムーブメントは非常によい状態で新品に近くまで機能は回復しました(アンティークの味は出ていますが、外観はかなりくたびれているのが残念でした。HPに載せています)。
〒924-0862 石川県白山市(旧松任市)安田町17-1 イソザキ時計宝石店
電話(FAX):076−276−7479  メール:isozaki@40net.jp